フォグランプ

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ファイル:Foglights.jpg
角型フォグランプの例

フォグランプ英語: fog lamp)とは、自動車等に装備される灯火の一種で、ヘッドランプなどとは別に装備される白または黄色い光を発生する補助灯である。フォグライトあるいは霧灯ともいう。

自動車のフォグランプ

種類

フロントフォグランプ

ファイル:1991 Toyota Carina ED.jpg
フォグランプ一体型ヘッドランプの例
トヨタ・カリーナED

フロントフォグランプ(前部霧灯)は、などにより視界が不十分である場合に、ヘッドランプの補助的な役割で用いられる照明灯[1]。灯色は白または淡黄色。悪天候時に視界を確保しつつ対向車等の第三者に自車の存在を明らかにし注意を促す機能を持つ[1]

前方を照らす前照灯とは役割が異なり、広い範囲の視認性を向上させるため、左右への照射角を前照灯よりも広い配光としたレンズを備えているのが特徴である(前照灯がおおむね70度前後であるのに対し、フォグランプはおおむね100度以上)。一方、前方の霧に強い光が当たらないよう、上下の照射角は前照灯よりも狭く設計されている。この理由は、霧に反射した光の明るさが運転者の瞳孔を絞り、暗い部分を見えにくくすることを防ぐためである。

フォグランプが近くを広く照らす配光パターンを持つことから、直近の路肩や道路標示、車線分離帯などを照らす補助前照灯として用いられる場合もある。ヘッドランプの位置が乗用車に比べて高く、旋回時に運転席が大きく左右に振られるバスキャブオーバートラックでは、天候にかかわらずフォグランプを点灯している例が多く見られる。

日本では法規によって装備が義務付けられていないため、車種やグレードによって選択的に装備される。SUVRVをはじめとして、機能性だけでなく外観意匠の一部として装備される場合もある。かつては純正でも汎用的な外観の製品を、車体のほかの部品を大きく加工することなく取り付けるものが主流であったが、近年ではバンパーにフォグランプ用の開口部を設けるなど、車体デザインに大きく影響しないように設計される場合が多い。また、フォグランプを車体デザインの一部として標準装備する車種もある。

の性質上、波長の短い青色光はの粒に散乱して遮られ、波長の長い赤色光はそれを通りぬけてより遠くまで届く性質(霧中透過性)が高い。しかし、多くの国では法規により赤色の灯火を車体前方に設置できないため、赤色光に次ぐ霧中透過性を持つ中間の波長の黄色光が良いとされ、霧に反射して運転者の視界の妨げになる波長を含まない単色光がより良いとされてきた。かつての主流は黄色灯で、1980年代には前照灯も黄色のものが流行した[2]。しかし、単色光は運転者に錯覚を起こさせ、距離感がつかみにくい現象や特定の色が認識しにくい現象が知られるようになり、遠方には黄色の光を投射して手前は白色の光で照射するように色分けされた電球も流行するようになった。最近では白色の割合が増加し、前照灯と共に、HID式の物や、特に長波長の可視光を遮るコーティングを施して色温度を高くした蒼白い光を放つ電球が流行している。

EUでは2011年2月以降、乗用車のデイライトが義務化しており日中でもフォグランプ等を点灯させなければならない。日本では気象による点灯についての法的基準は特になく、「夜間やトンネル内等、前照灯が必要な場合は原則ハイビームで走行し、先行車や対向車がいる場合はハイビームを消してロービームで走行すること」とされている。

リアフォグランプ

ファイル:Nissan Skyline R34 GT-R Nür 002.jpg
片側をリアフォグランプ、反対側をバックアップランプ(後退灯)の非対称配置とした例
日産・スカイラインGT-R

濃霧などの気象条件により視界が制限される場合において、後方からの被視認性を向上させる目的で設置される赤色の灯火をリアフォグランプ(後部霧灯)と呼ぶ。通常のテールランプよりも明るく、制動灯と同等の明るさを持つ。そのため、不必要な使用は後続車のドライバーを眩惑させる原因となる。

日本やヨーロッパの保安基準ではヘッドランプまたはフロントフォグランプのスイッチが入っていないとリアフォグランプを点灯できず、ヘッドランプをいったん消灯するとリアフォグランプは再度スイッチを操作する必要がある構造が義務づけられている。ヨーロッパでは1975年から、すべての新型車への装備が義務化されている[3]。一方、日本ではリアフォグランプの装備が義務化されていないこともあって販売する全車種で装備しないメーカー(シビックシャトル販売終了後、ホンダでは欧州から輸入販売する車種を含めて国内販売するすべての車種に装備しない。また、商用車やバスではトヨタのバンおよびトラックの一部と大型バスの一部(日野・セレガいすゞ・ガーラ)及びガーラミオに設定があるのみである)もあり、輸入車を除くと現在も装備している車両は多くない。オプションながら、日本国内で販売される日本車で初めてリアフォグランプが設定されたのは、1988年にホンダから発売された『3代目プレリュード』とされており、リアガーニッシュの右側に装備された。

これ以降、日本車でもオプション設定や寒冷地仕様装備としてリアフォグランプが普及し、一部の車種で標準装備となっている。

1灯または2灯が取り付けられ、2灯の場合は左右対称に取り付けられる。1灯の場合は車体中央か、道路のセンターライン寄りに取り付けることが保安基準で定められていて、左側通行向けの車両では右寄りに、右側通行向けでは左寄りに設置される[4]。加えて、ブレーキランプ(制動灯)の光源とリアフォグランプの光源とを10cm以上離すことが規定されている[5][6]。車種によっては、テールランプと一体に装備する例や、片側や中央に独立した1灯のランプとして装備する例、片側をリアフォグランプ、反対側をバックアップランプ(後退灯)の非対称配置とする例がある。

明るさの基準はブレーキランプ(制動灯)と同等だが、長時間連続して点灯されるためランプ筐体は電球の発熱に対する耐性を持たせなくてはならない。したがってバックランプと同じ形状でデザインされたものでも、灯体の材質や構造などによりコストがかかっている場合が多い。光源として発熱の少ないLEDを利用する場合もあるが、現在の市場ではLEDのコストも白熱電球より高価である。

ドライビングランプ

ファイル:037Rallye.jpg
多数のドライビングランプとスポットランプを装備したラリーカーの例
ランチア・ラリー037

フォグランプとは異なりヘッドランプのハイビームに近い配光特性を持った補助前照灯はドライビングランプと呼ばれる。また、ハイビームよりさらに遠く狭い範囲を照らす補助前照灯はスポットランプと呼ばれる。ドライビングランプの中には上方への拡散を防ぐ配光パターンを持つものもある。いずれも夜間にヘッドランプの補助として用いるものであるが、日本の保安基準では配光パターンに関係なく「前部霧灯」とされ、公道上での使用は保安基準に沿った運用が求められる。市販車での採用例としてはフェラーリF355などがある。

アクセサリーランプ

霧灯としての機能を重視していないものはカタログ上で「アクセサリーランプ」または「アクセサリーライト」と表記されているものもあるが、慣用的にはフォグランプと呼ばれ、日本では適用される保安基準も「前部霧灯」と同じである。

装備と規格

自動車用ランプに関しては1958年協定に基づき国連でECE規則が策定され加盟国間では認証の相互承認制度が導入されている[1]

日本の保安基準

フォグランプは道路運送車輌の保安基準第33条 (PDF) で前部霧灯(過去には補助前照灯と呼ばれていた)として、リアフォグランプは同 第37条の2 (PDF) で後部霧灯として規定され、それぞれの細目告示および細目告示別添によって技術基準が設けられていて、前部霧灯の概略は次のとおりである。

  • 射光線は他の交通を妨げないものであること
  • 灯光の色は白色または淡黄色であり、その全てが同一であること
  • 照明部の上縁の高さが地上0.8m以下であって、すれ違い用前照灯の照明部の上縁を含む水平面以下、下縁の高さが地上0.25m以上となるように取り付けられていること
  • 照明部の最外縁は、自動車の最外側から400mm以内となるように取り付けられていること
  • 1個の場合は車両の中央に取り付けられ、2個の場合は車両中心面に対して対称の位置に同形状、同色のものを取り付けること(この規定がなかった時代には、マーチスーパーターボのようなスポーツ車では、片方を撤去して開いた穴をエアインテークとし、吸気ラジエーター等の冷却に使う例もあった。)
  • 3個以上が同時に点灯しないこと(2対以上のフォグランプを取り付ける例もあるが、公道上で点灯することができるのはいずれか1対だけである)
  • フォグランプの点灯操作状態を運転者席の運転者に表示する装置を備えること。

上述の保安基準は政府の規制緩和方針により法令改正されたもので、2006年1月1日以降に生産される自動車に適用される。2005年12月31日以前に生産された車では、現行規定と旧規定のどちらかに適合していればよい[7]

  • 光度は1万cd以下であること
  • 主光軸が前方40m以上照射するものは、前照灯を減光、又は下向きに変換した場合点灯しないこと

などの規定があったほか、取り付け位置についての規定も現行のものと若干異なっていた。

後部霧灯の概略は以下のとおりである。

  • 射光線は他の交通を妨げないものであること
  • 灯光は赤色であること
  • 照明部は2個以下であること
  • 2個の場合は左右対称に、1個の場合は車体中央もしくは右側に取り付けられていること
  • ヘッドランプ、もしくはフォグランプのいずれかと同時にのみ点灯でき、かつ単独で消灯できる構造であること(単独点灯は不可)
  • 照明部は上縁の高さが地上1m以下、下縁の高さが地上0.25m以上となるように取り付けられていること
  • ストップランプの照明部より100mm以上離れていること
  • 作動状態が運転者に表示できる装置を備えていること(インジケーターランプ等)

なお、日本ではランプ性能に関してJIS規格が定められているが、1998年以降順次正式にECE規則が導入されている[1]

欧州の保安基準

EU(欧州連合)では国連で制定されるECE規則とは別にEU域内の自動車及び自動車部品の認証の相互承認のためEEC指令(EEC Directive)が制定されている[1]。しかし、EEC指令よりもECE規則が先行しているためECE規則の認証を取得するのが一般的となっている[1]

米国の保安基準

米国の自動車ランプの法規には米国運輸省内の機関であるNHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)で制定される「FMVSS No.108(Federal Motor Vehicle Safety Standard No.108)」がある[1]。しかし、フロントフォグランプ等の装着が任意のランプについては規定がないため各州法に従う[1]

保安基準に関しては業界団体のSAE(Society of Automotive Engineers,Inc.)が制定したSAE規格(SAE Standard)」がある[1]


脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 植木雅哉「自動車用ランプについて」 照明学会誌、2018年9月9日閲覧。
  2. 黄色光に対する見解は国によって異なる。日本においては、2006年以降新造された車両に黄色のヘッドランプを使用すると違法改造となる。(例えばIPFの公式サイトにて、その件が明言されている。)
  3. 対してフロントフォグランプの装備義務付けはなされていないため、フロントフォグランプは無い車種でもリアフォグランプは装備される。
  4. 国際連合欧州経済委員会法規(ECE R) 48 6.11.4.1.
  5. ECE R48 6.11.9.
  6. 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第3節 第129条3-6”. 国土交通省. . 2011閲覧.
  7. 道路運送車両の保安基準第2章および第3章の規則の適用関係の整理のため必要な事項を定める告示 (PDF) より

関連項目

外部リンク

en:Automotive lighting#Front fog lamps