フィート
フィート (feet)又はフート(国際フィート) | |
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記号 | ft(計量法), ′(計量法上は認められていない) |
系 | ヤード・ポンド法 |
量 | 長さ |
SI | 正確に 0.3048 m(国際フィート)、米国測量フィートは約 0.304 800 609 601 219 m |
定義 | 1/3ヤード[1]、12インチ |
フィート、フート(計量法上の表記)又はフット(複: feet, 単: foot)は、ヤード・ポンド法における長さの単位である。様々な定義が存在したが、現在では「国際フィート」が最もよく用いられており、正確に 0.3048 メートルである[2]。1フィートは12インチであり、3フィートが1ヤードである。
日本では、他のヤード・ポンド法の単位と同様、一定の場合に限り、当分の間、使用することができる[3]。
フィート、フート、フット
英語での単数形は foot(フートまたはフット)である。計量法の体系では、「フット」の語が用いられることはなく、「フート又はフィート」と定められている[4]。これは、JIS規格などにおいても同様である(例えば、JIS Z 8202-1「量及び単位 第1部:空間及び時間」における、「フート」、「平方フート」、「立方フート」、「フート毎秒」、「フート毎秒毎秒」)[5]。 漢字では呎と書くことがある。
"one foot" のように英語では単数形を用いる場合にも、日本語ではフィートの語を用いることが多い。本項においては法定上の名称以外では、便宜上、統一して「フィート」を用いる。
単位記号
単位記号は日本の計量法上は、 ft のみを使うことができる[6]。米国では、′(プライム)を用いることがある。例えば 30′ は30フィートを意味する。プライム記号は、分 (角度)の記号である[7]ので紛らわしく使用しない方がよい。プライム記号の代わりに ’(アポストロフィ)が用いられることもある。″(ダブルプライム)がインチを表すので、5′1″ は5フィート1インチの意味となる。
歴史
本来、フィートは足の大きさに由来する身体尺であるとされている。feet/foot は足を意味する単語である。ヨーロッパのほぼ全ての文化で、足の長さを基準とする長さの単位が使われていた。足の長さを使用した長さの基準で最も古いものは、シュメールに見られる。その長さは、紀元前2575年ごろのラガシュの支配者グデアの像によって知ることができる。
国際フィートは、古代ギリシャ時代にエジプトで使われていたフィートを変更して作られた、ローマ帝国で採用されたより大きなフィートに由来する。
国際フィート
度量衡の標準化の過程でいくつかの異なる長さのフィートが使用されてきた。最もよく使われてきたのは、イギリスのフィート(約 0.304 798 967 m)とアメリカのフィート(約 0.304 800 609 m)であった。英フィートに対して米フィートは、約5.39×10-6だけ大きい。測定精度の向上により、この差が無視できなくなったので、1958年に両国とカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの6ヶ国が協定を締結し、その長さを1959年7月1日以降、正確に 0.3048 メートルと定めた。
これが国際フィート (International foot) と呼ばれているものである[8][9]。国際フィートは上記の6カ国以外においても航空分野など特殊な分野で今も使われている。日本国内においても計量法附則第5条によって同様の扱いとなっている[10][11]。
測量フィート
国際フィートが定められた後も、アメリカ合衆国では従来のフィートは米国測量フィート (U.S. survey foot) と名付けられ、アメリカ合衆国内の測地測量に使われ続けている[8]。これは、米国沿岸測地測量局 (US Coast and Geodetic Survey, 現 U.S. National Geodetic Survey) の測地測量の成果を1959年以降も継続して使用しているためである。
米国測量フィートは、1893年以降、正確に 1200 / 3937 メートル(約 0.304 800 609 601 219 m)と定義されている。このような定義になったのは、アメリカが1866年にメートルを最初に導入した際に、メートルを基準にしてフィートを定義するのではなく、フィートを基準にしてメートルを次のように定義したためである[12]。
定義:1 メートル = 39.37 インチ(正確に)
1フィート = 12インチであることから、1 メートル = 39.37 ×[math]\frac{1}{12}[/math]フィート = [math]\frac{3937}{1200}[/math]フィート
したがって、1 測量フィート = [math]\frac{1200}{3937}[/math]メートル = 約 0.304 800 609 601 219 メートルとなる。
国際インチは正確に 0.0254 メートルなので、国際フィートは測量フィートの正確に 0.999 998 倍である (0.999 998 = 0.0254 × 39.37)。すなわち、次の関係がある。
- (国際フィート = 0.3048 m) × 1 000 000 = (測量フィート = 1200/3937 m) × 999 998 = 304 800 m
つまり、1 000 000国際フィートの長さを、測量フィートで測り取ると、正確に 2測量フィート分だけ少ないことになる。
なお、ヤードはフィートの正確に3倍であるが、測量フィートに対応する「測量ヤード」というものはない。これは、米国の測地測量においては、測量マイル、測量フィート、ロッド、チェーン、リンクのみが使用され、ヤードという単位は決して使用されることがないためである(en:Furlong#Conversion to SI units)。
インドにおいてもアメリカ合衆国と同様の事情があったために、インド国内での測地測量のために、Indian survey foot=正確に 0.304 799 514 メートルが残されている[13]。イギリスでは1936年以来、メートルで測地測量を実施していたのでアメリカ、インドのような問題は生じておらず、1959年以降は国際フィートのみを使用している。
日本語での表記
東洋の尺貫法における尺(日: 約 0.303 03 m、中: 約 0.333 33 m)も、現在のものは足を基準にしたものであり、フィートとほぼ同じ長さとなっている。そのため、フィートを表すために作られた漢字は「尺」に基づく「呎」であり、中国ではフィートのことを「英尺」と呼んでいる。
1 foot のように英語では単数形を用いる場合にも、日本語では「フィート」を用いることが多い[14]。foot を日本語で表記する際に、「足」の意味で使われている場合は「フット」、長さの単位として使われている場合は「フィート」と慣習的に書き分けている。
用途
航空交通管制で、航空機の飛行高度を表すためにフィートが世界的に使われる。航空管制以外の日常生活や商取引では、アメリカ合衆国など一部の国に限られるが、アメリカ合衆国が世界的に大きな影響力を持っている関係上、日本を始めとするメートル法を採用している国でも用途や対象を限定してフィートの使用を認めている。なお、中国、北朝鮮、モンゴル、ロシアおよびCIS各国では、航空管制においてメートルが使用されている。
具体的には、日本の計量法は、フィートを含むヤード・ポンド法による計量単位を、「1)航空機の運航に関する取引又は証明 2)航空機による運送に関する取引又は証明 3)航空機及び航空機用機器並びにこれらの部品に関する取引又は証明、の3つについては当分の間、法定計量単位とみなす。」としている[15]。
俗説
フィートの長さは、ヘンリー1世の足の長さであるという俗説がある。ヘンリー1世の足の長さは12インチであったという。ヘンリー1世は、この長さをもってイングランドにおける長さの基準とした。
しかし、現代のヨーロッパ人男性の足の長さの平均は約9.4インチ (24 cm) であり、イギリス人男性1,000人のうち996人は足の長さが12インチ未満である。一般的な男性の足の長さよりも1フィートが長くなっている理由として最も有力なものは、元となったヘンリー1世の足の長さは裸足で測られたのではなく、靴か何かをはいた状態で測ったものである、というものである。足の長さを使って敷地の長さなどを測ることを考えると、裸足で歩測することは考えにくく、靴を履いて行うものと考えられるからである。
組立単位
脚注
- ↑ 計量単位令 別表第七 長さ、フート又はフィートの欄
- ↑ 計量単位令 別表第七 長さ、フート又はフィートの欄およびヤードの欄 メートルの〇・九一四四倍
- ↑ 例外(取引又は証明の使用が認められる場合)の節 1.ヤードポンド法による計量単位について 経済産業省産業技術環境局計量行政室
- ↑ 計量単位令 別表第七 長さ、フート又はフィート
- ↑ JIS Z 8202-1:2000「量及び単位 第1部:空間及び時間」
- ↑ 計量単位規則 別表第6 長さ、フート又はフィートの欄
- ↑ 計量単位令 別表第2 「角度、分」の欄
- ↑ 8.0 8.1 A. Thompson and B. N. Taylor, "The NIST Guide to the SI" B.6 U.S. survey foot and mile
- ↑ Louis E. Barbrow and Lewis V. Judson, "Weights and Measures Standards of the United States A brief history" (PDF) , 1976, Appendix 5. The United States Yard and Pound, Refinement of Values for the Yard and the Pound, pp30-31.
- ↑ 計量法 附則第5条:「(ヤードポンド法による計量単位) 第五条 ヤードポンド法による計量単位及びその定義は、政令で定める。 2 前項の政令で定めるヤードポンド法による計量単位は、次に掲げる取引又は証明に用いる場合にあっては、当分の間、法定計量単位とみなす。 一 航空機の運航に関する取引又は証明その他の航空に関する取引又は証明であって政令で定めるもの 二 その物象の状態の量が前項の政令で定めるヤードポンド法による計量単位により表記されて輸入された商品であって政令で定めるものに係る取引又は証明」 法令データ提供システム、電子政府の総合窓口e-Gov
- ↑ 計量単位令(総務省e-Gov) 別表第7 項番1 長さ(ヤード、インチ、フート又はフィート、チェーン、マイル)
- ↑ The U.S. Metric Law of 1866 (PDF) 第2ページ、「MEASURES OF LENGTH.」の表、Meterの欄
- ↑ Number Freaking: How to Change the World with Delightfully Surreal Statistics p.218, Gary Rimmer, ISBN 978-1932857-27-6, 2006, The Disinformation Company Ltd.
- ↑ 英語の文法では「5歳女児」を "five-year-old girl" と、前後をハイフンで結ぶ場合には "year" のような単位を単数形で書くルールがあり、同様に「身長6フィートの男性」は "six-foot-tall man" と表記するので、フィートの単数形に慣れていない日本人には分かりにくい。
- ↑ 計量法[1]附則5条2項1号及び計量単位令[2]9条、質問と回答
関連項目
メートル(SI単位) | インチ | フィート | ヤード | 寸 | 曲尺 | 鯨尺 | |
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1 m | = 1 | ≈ 39.370 | ≈ 3.2808 | ≈ 1.0936 | = 33 | = 3.3 | = 2.64 |
1 in | = 0.0254 | = 1 | ≈ 0.083333 | ≈ 0.027778 | = 0.8382 | = 0.08382 | = 0.067056 |
1 ft | = 0.3048 | = 12 | = 1 | ≈ 0.33333 | = 10.0584 | = 1.00584 | = 0.804672 |
1 yd | = 0.9144 | = 36 | = 3 | = 1 | = 30.1752 | = 3.01752 | = 2.414016 |
1 寸 | ≈ 0.030303 | ≈ 1.1930 | ≈ 0.099419 | ≈ 0.033140 | = 1 | = 0.1 | = 0.08 |
1 尺(曲尺) | ≈ 0.30303 | ≈ 11.930 | ≈ 0.99419 | ≈ 0.33140 | = 10 | = 1 | = 0.8 |
1 尺(鯨尺) | ≈ 0.37879 | ≈ 14.913 | ≈ 1.2427 | ≈ 0.41425 | = 12.5 | = 1.25 | = 1 |