バーナード・ハーマン
バーナード・ハーマン(Bernard Herrmann, 1911年6月29日 - 1975年12月24日、ニューヨーク市生まれ)は、主に映画音楽で活躍したアメリカの作曲家で、アルフレッド・ヒッチコック監督作品(『めまい』、『北北西に進路を取れ』など)や『市民ケーン』、『ケープ・フィアー』、『タクシードライバー』(遺作となった)など多くの映画作品に音楽を提供した。
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経歴
出生名マックス・ハーマン(Max Herman)としてロシア出身のユダヤ移民一世の家庭に生まれる[1]。父の旧姓はダルディック(DardickもしくはDardik)であったが、米国に移民する際に母方の旧姓であるフィンケルパール(Finkelpearl)に改め、次いで母のいとこのファーストネームに因んでハーマン(Herman)と改め、さらにドイツ語風にHerrmannと綴りを改めた[1]。
幼時からヴァイオリンの英才教育を受けた。音楽の教師と口論になり、ヴァイオリンで教師の頭を殴りつけた問題児でもあった。
ジュリアード音楽院卒業後、指揮者として自作を含めて多くの録音を制作し、クラシック作品における自作もステレオ録音で残した。交響曲やクラリネット五重奏曲、オペラ「嵐が丘」、カンタータなどを残した。ヒッチコックの『知りすぎていた男』にも指揮者として登場している。イギリス、アメリカの20世紀音楽に造詣が深く、チャールズ・アイヴズを擁護する一方、ウィリアム・ウォルトンの新ロマン主義的な作風に傾倒した。ハーマンによると映画音楽は商業音楽というより機会音楽の一種であり、ハイドンやモーツァルトがダンス音楽を作曲したように、自分は映画音楽を作曲するということだった。
1941年の『悪魔の金』で、アカデミー作曲賞を受賞した。
ヒッチコック映画に数々の曲を提供したが、1966年『引き裂かれたカーテン』のために作曲した音楽の出来映えを巡ってヒッチコックと対立し、以後永久に袂を分かった。
のちに、『恐怖の岬』(1962年)をスコセッシ監督がリメイクした『ケープ・フィアー』で、ハーマンのスコアを再構成したエルマー・バーンスタインが、船内の乱闘場面に『引き裂かれたカーテン』の音楽を使用した。
ハーマンは熱烈なイギリスびいきとして知られ、晩年をイギリスで過ごした。
ヒッチコックと決別して以降、映画音楽で傑作を生み出せずにいたが、『タクシー・ドライバー』でのジャズの要素を取り入れたスコアが絶賛され、ブライアン・デ・パルマ監督の『愛のメモリー』と共にアカデミー作曲賞に30年ぶりにノミネートされた。
『タクシードライバー』の最後のレコーディング・セッションが終了して12時間後、息を引き取った。
同時代および後世の映画音楽に与えた影響は計り知れない。ダニー・エルフマンは、最も感化された映画音楽家としてバーナード・ハーマンの名を挙げている。1998年のリメイク版『サイコ』で、ハーマンの有名なスコアをほとんどアレンジせずに再構成したのはエルフマンであった。
他の作曲家の作品にも独自の見解を持っていて、友人のエルマー・バーンスタインが『オリエント急行殺人事件』の中で列車が発進する時に流れる軽いワルツを気に入り、ハーマンの前で弾いてみせた所、ハーマンは「死を運ぶ列車なのにワルツなんて!」と憤慨したという。
主な映画作品
- 市民ケーン - Citizen Kane (1941)
- 悪魔の金 - All That Money Can Buy (1941)
- ジェーン・エア - Jane Eyre (1944)
- 地球の静止する日 - The Day the Earth Stood Still (1951)
- 五本の指 - 5 Fingers (1952)
- キリマンジャロの雪 - The Snows of Kilimanjaro (1952)
- エジプト人 - The Egyptian (1954)
- ハリーの災難 - The Trouble with Harry (1955)
- 間違えられた男 - The Wrong Man (1956)
- 知りすぎていた男 - The Man Who Knew Too Much (1956)
- 夜を逃れて - A Hatful of Rain (1957)
- めまい - Vertigo (1958)
- 裸者と死者 - The Naked and the Dead (1958)
- シンバッド七回目の航海 - The Seventh Voyage of Sinbad (1958)
- 北北西に進路を取れ - North by Northwest (1959)
- 地底探検 - Journey to the Center of the Earth (1959)
- サイコ - Psycho (1960)
- SF巨大生物の島 - Mysterious Island (1961)
- 鳥 - The Birds (1963)
- アルゴ探検隊の大冒険 - Jason and the Argonauts (1963)
- マーニー - Marnie (1964)
- 華氏451 - Fahrenheit 451 (1966)
- 黒衣の花嫁 - La Mariée était en noir (1968)
- 密室の恐怖実験 - Twisted Nerve (1968)
- ネレトバの戦い - Bitka na Neretvi (1969)
- 悪魔の赤ちゃん - It’s Alive! (1974)
- 愛のメモリー - Obsession (1976)
- タクシードライバー - Taxi Driver (1976)
主な演奏会・舞台用音楽
- 交響詩「森」 (1929)
- 交響詩「11月の夕暮れ」 (1929)
- ヴァイオリンとピアノのための「鎮魂の祈り」 (1929)
- ヴァイオリンとピアノのための「黄昏」 (1929)
- バレエ「軍隊行進曲」 (1932)
- フルートとハープのための「アリア」 (1932)
- 弦楽のためのシンフォニエッタ (1935)
- カンタータ「白鯨」 (1937)
- チャールズ・アイヴズに献呈。
- 交響曲 (1941)
- 「第1番」と題されているが、2作目以降は手掛けられずに終わった。
- オペラ「嵐が丘」 (1951)
- 弦楽四重奏のための「エコー」 (1965)
- クラリネット五重奏曲「旅の思い出」(1967)
受賞歴
アカデミー賞
- 受賞
- 1942年 アカデミー劇映画音楽賞:『悪魔の金』
脚注
関連項目
文献
- Smith, Steven C. (1991). A Heart at Fire's Center: The Life and Music of Bernard Herrmann. US: University of California Press. ISBN 0520071239.
- Cooper, David (2001). Bernard Herrmann's Vertigo: A Film Score Handbook. US: Greenwood Press. ISBN 031331490X.
- Cooper, David (2005). Bernard Herrmann's The Ghost and Mrs Muir: A Film Score Guide. US: Scarecrow Press. ISBN 0810856794.
- Johnson, Edward (1977). Bernard Herrmann - Hollywood's Music-Dramatist - Foreword by Miklos Rozsa. Rickmansworth, UK: Triad Press - Bibliographical Series No. 6.
外部リンク
- バーナード・ハーマン - allcinema
- | sub | s=0000000002136 | -7 }}/ Bernard Herrmann - インターネット・ムービー・データベース(英語)
- Bernard Herrmann - Discogs