バイオジェン
バイオジェン(英:Biogen Inc.)はアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く医薬品メーカー[1]。 『ニューヨーク・タイムズ』によればバイオテクノロジー分野では最古参の会社の1つ[2]。新たな治療方法の探究から医薬品の製造、販売まで行っており、神経疾患、自己免疫疾患、希少疾患を主な対象としている[3]。
Contents
沿革
1978年、スイスのジュネーヴで科学者らと3名の投資家が創薬会社 Biogen NV を設立した[4]。創業者には科学者のウォルター・ギルバート、フィリップ・シャープ、ハインツ・シャーラー、ケネス・マレイ、チャールズ・ワイズマンがいる[5]。1982年、バイオジェンは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに新本社を置き、翌年1983年にNASDAQに上場した[6]。
2003年、バイオジェンは米国サンフランシスコのアイデック製薬会社 (Idec Pharmaceuticals) と合併、バイオジェン・アイデック (Biogen Idec) となった[4][2]。アイデックは1985年にモノクローナル抗体の開発、製品化を目的として設立された会社であり[4]、合併当時はジェネンテックと共同で権利を有する医薬品リツキサンにより急成長していた[2]。加えて、アイデックが非ホジキンリンパ腫の治療薬として開発したゼヴァリンは世界で初めて承認された放射免疫療法薬剤であり、前年2002年に米国で販売を開始したところだった[7]。
2006年5月、バイオジェン・アイデックはConforma Therapeuticsを買収した。この会社は1999年に設立され、熱ショックタンパク質の一種でがん細胞の増殖に関連しているHsp90の阻害剤を研究するなど、悪性腫瘍を専門としていた[8]。続いて6月には、2003年から共同研究を行っていたスイスの製薬会社Fumapharmを買収した[9]。翌2007年、Syntonix Pharmaceuticalsを買収した。血友病の治療薬ElocateとAlprolixはこの会社に由来するものだった[10]。
2015年、会社名を合併前のバイオジェンに戻した[4]。2017年に血友病の治療薬を扱うバイオベラティブがバイオジェンから分社した[注釈 1][11]。
2018年、米国の製薬会社ファイザーから統合失調症の新薬候補PF-04958242を取得し、神経精神領域に事業を拡大した[12]。
製品
多発性硬化症
- アボネックス (Avonex) - インターフェロンβ-1a製剤
- 多発性硬化症の治療薬。1996年に再発型の多発性硬化症の治療薬としてアメリカ合衆国で承認された[13]。
- タイサブリ (Tysabri) - ナタリズマブ
- ファンピラ (Fampyra) - ファンプリジン
- テクフィデラ (Tecfidera) - フマル酸ジメチル
- プレグリディ (Plegridy) - インターフェロンβ-1a
- ジンブリタ (Zinbryta) - ダクリズマブ
その他
- FUMADERM - フマル酸エステル
- リツキサン (Rituxan) - リツキシマブ
- Gazyba - オビヌツズマブ
- スピンラザ (Spinraza) - ヌシネルセン
- コールド・スプリング・ハーバー研究所のアドリアン・クライナーとアイオニス・ファーマシューティカルズの共同研究により創薬された脊髄性筋萎縮症の治療薬[18]。バイオジェンは2012年からアイオニスと提携しており、スピンラザに関するライセンス契約を締結している[19]。
日本におけるバイオジェン
バイオジェンは2000年から日本で事業を展開しており、日本法人としてバイオジェン・ジャパン株式会社を設置している[20]。
脚注
注釈
出典
- ↑ “BIIB:US”. Bloomberg. . 2018閲覧.
- ↑ 2.0 2.1 2.2 ANDREW POLLACK (2003年6月24日). “Idec to Merge With Biogen in $6.8 Billion Deal”. New York Times . 2018閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 “Validea's Top Five Healthcare Stocks Based On Warren Buffett - 6/17/2018”. NASDAQ. (2018年6月17日) . 2018閲覧.
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 “沿革”. バイオジェン・ジャパン. . 2018閲覧.
- ↑ “About Biogen”. Biogen. . 2018閲覧.
- ↑ “About_History”. バイオジェン. . 2018閲覧.
- ↑ 戸倉雅彦、藪内由史「ゼヴァリンの開発経緯と放射免疫療法の今後」、『Drug Delivery System』第28巻第3号、日本DDS学会、2013年、 197-204頁、 doi:10.2745/dds.28.197、. 2018閲覧.
- ↑ “Biogen Idec buys cancer drug firm Conforma”. PharmaTimes Online. (2006年5月4日) . 2018閲覧.
- ↑ “Biogen Idec agrees to buy Swiss company Fumapharm”. PharmaTimes Online. (2006年6月1日) . 2018閲覧.
- ↑ “Better Together, or Apart? Biogen, Bioverativ Head Down Separate Paths”. Xconomy. (2017年2月1日) . 2018閲覧.
- ↑ 白石透冴 (2018年1月22日). “仏サノフィ、米血友病薬企業を約1兆2800億円で買収”. 日本経済新聞電子版 . 2018閲覧.
- ↑ 12.0 12.1 西邨紘子 (2018年3月13日). “米バイオジェン、ファイザーから新薬候補を取得”. 日本経済新聞電子版 . 2018閲覧.
- ↑ 隅野留理子「多発性硬化症治療薬インターフェロン ベータ-1a 製剤(アボネックス® 筋注用シリンジ30μg)の薬理学的特性および臨床試験成績」、『日本薬理学雑誌』第129巻第3号、日本薬理学会、2007年、 209-217頁、 doi:10.1254/fpj.129.209、. 2018閲覧.
- ↑ テンプレート:Cite paper
- ↑ 北村正樹 (2014年6月27日). “タイサブリ:4週に1回の静注で済む多発性硬化症治療薬”. 日経メディカル (日経BP) . 2018閲覧.
- ↑ “多発性硬化症薬の販売中止、米アッヴィとバイオジェン”. 日本経済新聞電子版. (2018年3月3日) . 2018閲覧.
- ↑ テンプレート:Cite paper
- ↑ Ken Garber (2016-10-11). “Big win possible for Ionis/Biogen antisense drug in muscular atrophy”. Nature Biotechnology 34: 1002–1003 . 2018閲覧..
- ↑ “Biogen Shells Out $75M to Develop Ionis' Nusinersen after Positive Phase III Results”. Genetic Engeneering & Biotechnology news. (2016年8月1日) . 2018閲覧.
- ↑ “多発性硬化症の患者さんの実態調査”. 産経デジタル (2017年5月30日). . 2018閲覧.