ハトムギ
ハトムギ(鳩麦、Coix lacryma-jobi var. ma-yuen)はイネ科ジュズダマ属の穀物。ジュズダマとは同種で、栽培化によって生じた変種である。ハトムギ粒のデンプンは糯性であり、ジュズダマは粳性である。
中国南部からインドシナ半島にかけての原産とされる。系統分類学上はキビ亜科 Panicoideae ウシクサ連 Andropogoneae に属し、イチゴツナギ亜科 Pooideae の狭義の麦類よりもトウモロコシやモロコシ、ススキに近縁である。生育期間は160日前後で、そのうち登熟に30日程度必要。花期は8〜10月、9月〜10月に果実を採取し、果皮と種皮を取り除き日干しする。
日本での栽培
日本への伝播には諸説あり、奈良時代とも江戸時代とも言われている。享保年間には薬用として栽培されていた。牧野富太郎によると、日本へは中国から伝播したとされるが、形態的、生態的に朝鮮半島原産に類似しており、DNA分析によっても日本と韓国在来品種の違いはほとんどなく[1]、朝鮮半島を経由して伝播したと考えられる。[2]
C4植物であるが、耐湿性があり、1981年水田利用再編対策の特定作物として認められた事をきっかけとして、水田転作作物として栽培されている。安定的な品質と収量を確保するためには、圃場の水はけが悪かったり、潅水できないため土が乾燥する条件は適さない。10a当たり収量は200kg〜300kg。
各地で系統の比較検討が行われ、「岡山在来」と名付けられた系統が最初に全国的に栽培されたが、「あきしずく」が国内生産のほとんどを占める(2017、全ハト協資料)。主な産地は、岩手県奥州市衣川区・花巻市、栃木県鹿沼市・小山市、広島県三原市大和町、福岡県久留米市三潴町、青森県中泊町、富山県氷見市、小矢部市などである。
- 主要栽培種と適地[3]
- 中里在来 北東北以南 青森県秋田県で作付とあ
- 岡山在来 温暖地
- はとちから 関東以西
- はとむすめ 関東以西、全国で作付されたが葉枯病に弱いため作付減少
- はとひかり 関東以西
- はとじろう 東北中・山間地
- あきしずく 福島以西
- とりいずみ 関東以西 鳥取県と大分県で作付
- オホーツク1号 北海道中部以南
利用
漢方や民間療法では、皮を剥いた種子を薏苡仁(よくいにん)と呼んで薬用に用いられ、いぼ取りの効果、利尿作用、抗腫瘍作用などがあるとされる。漢方では薏苡仁湯などに使われる。また、ハトムギ茶やシリアル食品などにも利用される。 ハトムギエキスは皮膚に塗布すると、保湿作用、美白作用があることが知られており、基礎化粧品に配合されることも多い。
漢方の古典では、妊娠中にハトムギを摂取することは禁忌とされている[4]が、現代においては明確な根拠はなく、度を越えた量を使用をしない限り安全と考えられている[5]。
脚注
- ↑ “「特産種苗」第3号 2009.7 【特集】《ハトムギ》 日本のハトムギ栽培 (PDF)”. 財団法人 日本特産農作物種苗協会. . 2012閲覧.
- ↑ 原貴洋、手塚隆久、松井勝弘「東アジア地域のハトムギ(Coix lacryma-jobi L.)遺伝資源の形態的形質の変異」、『日本作物學會紀事』第76巻第3号、日本作物学会、2007年7月5日、 459-463頁、 doi:10.1626/jcs.76.459、 NAID 110006345371。
- ↑ [社団法人 農林水産技術情報協会]
- ↑ 日産婦誌53巻9号 産科領域における漢方薬の使用 日本産科婦人科学会 (PDF)
- ↑ “爽健美茶で流産? 根も葉もない噂、コカ・コーラ社が否定「妊婦が飲んでも問題ない」”. ハフポスト. . 2018閲覧.
関連項目
外部リンク
- ハトムギについてWayback Machineのログ-社団法人 農林水産技術情報協会
- ハトムギ/作物の花-公益社団法人 農林水産・食品産業技術振興協会
- 植物図鑑-ハトムギ画像 - 独立行政法人 医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター
- ハトムギ(ヨクイニン/ヨクベイ) - 「健康食品」の安全性・有効性情報 (国立健康・栄養研究所)
- 氏平洋二、石田喜久男「ハトムギの品種特性について」、『日本作物学会中国支部研究集録』第24号、日本作物学会、1982年7月15日、 24-26頁、 NAID 110001724972。
- 内田敏夫、山本雄慈「ハトムギの作期と生育収量」、『日本作物学会中国支部研究集録』第24号、日本作物学会、1982年7月15日、 28-29頁、 NAID 110001724973。