ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験( -しけん、Network Specialist Examination、略号NW)は、情報処理技術者試験の一区分である。試験制度のスキルレベル4(スキルレベルは1~4が設定されている。)に相当し、高度情報処理技術者試験に含まれる。対象者像は「ネットワークに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者」。
概要
主にネットワークの設計担当者や管理責任者、いわゆるネットワークエンジニアを対象としている。試験の水準は高く、国内で実施されるネットワークに関する試験の中ではCCIEやLPICレベル3と並んで最難関にあたり、実務経験者であっても合格するのは難しい試験として広く認知されている。
基本情報技術者試験(スキルレベル2)や応用情報技術者試験(スキルレベル3)の上位試験にあたり、ネットワーク技術の専門性を追求するために制定された試験である。
沿革
- 昭和63年(1988年)オンライン情報処理技術者試験新設、秋期に年一回実施。受験者の平均合格率は4.8%、最低合格率は2%である。
- 平成5年 (1993年)オンライン情報処理技術者試験はこの年をもって廃止、ネットワークスペシャリスト試験とデータベーススペシャリスト試験に分割。
- 平成6年 (1994年)ネットワークスペシャリスト試験実施。第一種情報処理技術者試験からのステップアップを想定した実質的な上位資格として認定。
- この頃は、ネットワーク技術がインフラストラクチャーとして必須のものになりつつある時期であり、ネットワークに関する試験は殆ど無く、難度も高いため社会的評価も高かった。また受験に制限が無かったことからも、第一種情報処理技術者の次に目指す区分としてデータベーススペシャリストと同様にもてはやされた。以後もこの傾向自体は変わらない。
- 平成13年(2001年)制度改正によりネットワークスペシャリスト試験からテクニカルエンジニア(ネットワーク)試験と改称および形式変更。
- 情報セキュリティアドミニストレータ試験が制定され秋期試験として同時期に実施されることとなり、テクニカルエンジニア(ネットワーク)と同等の評価を得られるとあって、情報セキュアドの受験者が増加し、相対的に受験者が減少した。
- 平成17年(2005年)午前の試験時間延長及び出題数増加。
- ソフトウェア開発技術者試験が秋期にも実施されることとなり、受験者がますます減少した。一方、合格率は例年ほぼ6~8%程度であったものが10%を超えるようになった。これは若年の受験者数の大幅な減少により平均年齢が上昇し、より長年受験している層が残ったことで受験者の実力水準があがったという考え方がある。
- 平成21年(2009年)制度改正により形式変更および改称、「ネットワークスペシャリスト」の名称が復活。また、同年情報セキュリティアドミニストレータとテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験が統合し情報セキュリティスペシャリスト試験が実施されることになる。この試験は年に2回開催するため、ネットワークスペシャリスト試験を受験する前に情報セキュリティスペシャリスト試験の合格を目指す者が増えた。また民間では各種ベンダー試験などの整備が進み同様に合格者が増加した、これらが一因となりネットワークスペシャリスト試験ならびにデータベーススペシャリスト試験の受験者層のレベルが上昇し合格率の上昇を招いたとも考えられている。
形式
- 午前I
試験時間50分。四肢択一式(マークシート使用)で30問出題され全問解答。他の高度情報処理技術者試験と共通のスキルレベル3相当で、ネットワークとの関連が薄い「情報化と経営」、「システム監査」等も含めた問題が出題される。満点の60%を基準点とし、基準点以上で午前I試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午前II・午後I・午後IIは採点されない。
- 午前II
試験時間40分。四肢択一式(マークシート使用)で25問出題され全問解答。ネットワークや情報セキュリティ関連(スキルレベル4)が中心であるが、「コンピュータシステム」「開発技術」(スキルレベル3)も対象である。満点の60%を基準点とし、基準点以上で午前II試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午後I・午後IIは採点されない。
- 午後I
試験時間90分。従前の午後Iとほぼ同じで、中規模の問題が3問出題され、2問を選択して解答。従前は1題あたり30分であったものが、1題あたり45分となり多くなっている。満点の60%を基準点とし、基準点以上で午後I試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午後IIは採点されない。
- 午後II
試験時間120分。従前の午後IIとほぼ同じで、ネットワークシステムの設計、運用・保守、障害対応、セキュリティ技術などを扱う事例解析問題が2問出題され、1問を選択して解答する。満点の60%を基準点とし、基準点以上で最終的に合格となる。基準点に達しなかった場合は不合格。
科目免除
下記の試験に合格又は基準点を得れば2年間、午前Iの科目免除が受けられる。
- 応用情報技術者試験に合格すること。
- いずれかの高度情報処理技術者試験に合格すること。
- 情報処理安全確保支援士試験に合格すること。
- いずれかの高度情報処理技術者試験の午前Iに基準点以上を得ること。
- 情報処理安全確保支援士試験の午前Iに基準点以上を得ること。
その他
- 合格又は午前Iに基準点以上を得れば2年間、他の高度情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の午前Iの科目免除が受けられる。
- IT人材育成センター国家資格・試験部の統計資料による累計値
区分 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
オンライン情報処理技術者 | 116,205 | 5,648 | 4.9 |
ネットワークスペシャリスト | 180,034 | 11,068 | 6.1 |
テクニカルエンジニア(ネットワーク) | 190,094 | 16,960 | 8.9 |
統計資料の応募者・受験者・合格者の推移表[1]において、上記の数値は本試験に計上されている。
- 最低合格率は平成元年(1989年)のオンライン情報処理技術者試験の2.0%。
- 科目免除又は任用資格、これには従前のテクニカルエンジニア(ネットワーク)を含む。
関連項目
- 情報処理推進機構(IPA)
- IT人材育成センター国家資格・試験部(旧:情報処理技術者試験センター)
- 情報処理技術者試験
- コンピュータネットワーク
- ネットワークエンジニア
- 情報処理安全確保支援士(RISS)
- 情報セキュリティスペシャリスト試験
- シスコ技術者認定(CCNA、CCIE)
- LPIC(Linux技術者認定資格)
- ドットコムマスター
- 電気通信設備工事担任者
脚注
- ↑ 情報処理技術者試験 推移表 (PDF) (IT人材育成センター国家資格・試験部)
外部リンク
- 情報処理推進機構 IT人材育成センター国家資格・試験部(旧:情報処理技術者試験センター)
- 平成21年度からの試験体系図(新着情報)
- ネットワークスペシャリスト試験(NW)(情報処理技術者試験制度 - 制度の概要)
- テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験(NW) 平成13年度春期から平成20年度秋期まで(同上)
- ネットワークスペシャリスト試験(NW) 平成6年度秋期から平成12年度秋期まで(同上)
- オンライン情報処理技術者試験 昭和63年秋期~平成5年秋期(同上)
- ネットワークスペシャリスト試験直前対策講座2009(日経BP社 ITPRO)