ネイピア数の無理性の証明

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ネイピア数の無理性の証明(ねいぴあすうのむりせいのしょうめい)は、1744年オイラーが初めて行った。実際、ネイピア数 e2 < e < 3 を満たす無理数である。証明は背理法による。すなわち、e有理数であると仮定して矛盾を導く。e が無理数であることの証明は、円周率 π が無理数であることの証明よりずっと易しい。π の無理性が初めて示されたのは1761年のことである。

e を底とする指数関数 ex は以下のようにテイラー展開される。

[math]e^x = \sum_{n=0}^\infty \frac{x^n}{n!}[/math]

x = 1 を代入すると

[math]e= \sum_{n=0}^\infty \frac{1}{n!} = 1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+ \cdots [/math]

以下、これを e の定義として無理数であることを証明する。

証明

e = a/b を満たす自然数 a, b が存在すると仮定すると b! ⋅ e は以下のように展開される。

[math]\begin{align} b! \cdot e &= \left(b! + \frac{b!}{1!} + \frac{b!}{2!} + \frac{b!}{3!} + \cdots + \frac{b!}{b!}\right) \\ &\qquad + \left\{ \frac{b!}{(b+1)!} + \frac{b!}{(b+2)!} + \frac{b!}{(b+3)!} + \cdots \right\}. \end{align}[/math]

左辺は [math]b! \cdot e = b! \cdot \frac{a}{b} = a(b-1)![/math] であるから自然数である。右辺は ( ) 内の b! から b!/b! までの項は全て自然数であるが、{ } 内の b!/(b + 1)! 以降の全ての項の和は、b1 以上であることから

[math]\begin{align} &\quad\left\{ \frac{b!}{(b+1)!} + \frac{b!}{(b+2)!} + \frac{b!}{(b+3)!} + \cdots \right\} \\ &= \frac{1}{(b+1)} + \frac{1}{(b+1)(b+2)} + \frac{1}{(b+1)(b+2)(b+3)} + \cdots \\ &\lt \frac{1}{2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{2^3} + \cdots = 1 \end{align} [/math]

と 1 未満になる。したがって ( ) 内と { } 内を足した右辺は自然数でないことになり、左辺が自然数という結果と矛盾する。

ゆえに e = a/b を満たす自然数 a, b が存在するという仮定は誤りである。

ネイピア数の冪乗の無理性

一般に、q0 でない有理数とすると、eq は無理数である。これは、リンデマンの定理のごく特別な場合であるが、それ自体の証明は比較的易しく、『天書の証明』で1ページ程度にまとめられている[1]

脚注

  1. M. Aigner and G. M. Ziegler, "Proofs from the Book", 3rd edition, Springer, 2003. ISBN 3540404600(日本語訳、蟹江幸博『天書の証明』シュプリンガー・フェアラーク東京、2002年 ISBN 443170986X)

参考文献

  • 塩川宇賢 『無理数と超越数』 森北出版、1999-03-30。ISBN 4-627-06091-2。
    1〜2頁および60〜61頁にネイピア数の無理性の証明が掲載されている。
  • ジャン=ポール・ドゥラエπ――魅惑の数』 畑政義訳、朝倉書店、2001-10-20。ISBN 4-254-11086-3。
    130頁にネイピア数の無理性の証明が掲載されている。

関連項目