ナナカマド
ナナカマド(七竈、学名;Sorbus commixta)は、バラ科の落葉高木。赤く染まる紅葉や果実が美しいので、北海道や東北地方では街路樹としてよく植えられている。
特徴
高さ7〜10m程度になり、夏には白い花を咲かせる。葉は枝先に集まって着き、奇数羽状複葉。秋にはあざやかに紅葉し、赤い実を成らせる。実は鳥類の食用となる。果実酒にも利用できる。
北欧などで魔よけとされているのは、ナナカマド (Japanese Rowan) と同じナナカマド属だが別種のセイヨウナナカマド (European rowan, Sorbus aucuparia) である。
語源
「ナナカマド」という和名は、"大変燃えにくく、7度竃(かまど)に入れても燃えない"ということから付けられたという説が広く流布している。
牧野富太郎は『牧野日本植物図鑑』で本種の項に
材ハ燃エ難ク、竈ニ七度入ルルモ尚燃残ルト言フヨリ此和名ヲ得タリト伝フ。
と記している。[1]
現在でも辞典類ではこの説が取り上げられる。下はその1例である。
- 七度かまどに入れても燃えないという俗説がある。(広辞苑 第六版、岩波書店、2008年)
ただしこれは現実的には正しくないようで、実際にはナナカマドの薪は良く燃えるとの記述もある。例えば『植物名の由来』で中村浩は
わたしは越後の山荘で何度か冬を過ごしたことがあるが、よくナナカマドの薪をたいて暖を取ったものである。この木の材はよく燃えて決して燃え残る事は無い。[2]
と自らの経験を述べている。鶴田知也は『草木図誌』で同様に事実を経験として述べ、『名前の由来には別の意味がある』可能性を示唆している。
炭
中村浩は『植物名の由来』で
と述べている。花鍬樹とはナナカマドのことである。[3]
利用
北海道では果実を用いてジャムやマーマレードなどの製造がおこなわれている。[4]
生の果実中に存在するソルビン酸はナナカマドの学名より取られた。現在は合成したものが保存料として使用される。[5]
セイヨウナナカマドの生果実にはパラソルビン酸が 0.4%-0.7% 含まれるが、加熱処理や乾燥でソルビン酸に変わる。[注釈 2]「健康食品の安全性・有効性情報」のサイトではヨーロッパナナカマドの新鮮な果実を過剰に摂取することに注意を喚起している。[6][注釈 3]
市町村の木に指定する自治体
- 北海道 - 旭川市、江別市、紋別市、士別市、苫小牧市、三笠市、室蘭市、稚内市、砂川市、洞爺湖町、岩内町、浦幌町、枝幸町、興部町、鹿部町、清水町、標津町、白老町、白糠町、鷹栖町、苫前町、幌加内町、比布町、大空町、利尻富士町、羅臼町
- 青森県 - 田子町
- 秋田県 - 鹿角市
- 山形県 - 山形市
- 福島県 - 猪苗代町
- Nanakamadoflower.JPG
ナナカマドの花
- Nanakamado rowanberry.jpg
ナナカマドの実
脚注
参考資料
- 中村浩 『植物名の由来』 東京書籍、東京、1998-09-16、第2版。ISBN 978-4487795574。
- 鶴田知也 『草木図誌』 東京書籍、東京、1979-10-01。ISBN 978-4487721450。
- 牧野富太郎 『牧野日本植物図鑑 増補版』 北隆館、東京、1956-03-20。(初版は1940年9月29日)
- 俵浩三 『牧野植物図鑑の謎』 平凡社、東京、1999-09-21。ISBN 978-4582850178。
出典
- ↑ 牧野日本植物図鑑, p. 467.
- ↑ 中村浩『植物名の由来』第2版 pp.158.
- ↑ 中村浩『植物名の由来』第2版 pp.159-160.
- ↑ ナナカマド果実の苦味物質について 北海道大学農学部農場研究報告
- ↑ 用途別 主な食品添加物 保存料 東京都福祉保健局
- ↑ ヨーロッパナナカマド、オウシュウナナカマド - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
注釈
- ↑ 出典には古書としか書かれていないため書名は不明。
- ↑ en:Rowan#Usesに "The raw fruit also contain parasorbic acid (about 0.4%-0.7% in the European rowan)" とあり、出典として Sorbus aucuparia L. が挙げられている。なお、Japanese rowan に関する言及は無かった。
- ↑ こちらも、日本のナナカマドに関しては言及していない。
外部リンク
- レファレンス事例詳細 (国立国会図書館)
- ななかまど 『牧野日本植物図鑑』 1940年版 (高知県立牧野植物園)