ドイツ軍

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ドイツ軍(ドイツぐん)は、近代から現代にかけてドイツにおける軍隊、つまり通称で言うところの「ドイツ軍」の正式な名称の変遷と、曖昧さ回避のためのページ。

概説

ドイツは、ヨーロッパにおいてイタリアに次いで近代的な国民国家の形成が遅れた国であり、統一国家の成立は1871年1月18日であった。その後、ドイツは2度の世界大戦の敗北とそれに伴う政治体制の変転を経験したばかりか、第二次世界大戦後冷戦体制では東西分断の憂き目を見ることとなった。政治体制の変動に伴い、軍隊に託す目的、軍隊に課す制約もまた変化した。これが軍隊の名称にも反映されている。

  • 第一次世界大戦に敗れ、ヴェルサイユ条約を受け入れ、ドイツ皇帝個人に忠誠を誓う軍隊から、ヴァイマル共和国憲法に忠誠を誓う軍隊に生まれ変わる。陸軍兵力は10万人に制限され、陸軍と海軍の総称をReichswehr(共和国軍)と改める。
  • 1935年にヴェルサイユ条約の軍備制限条項を破棄し、再軍備を始めたナチス・ドイツ時代の軍隊は、Wehrmacht(国防軍)と変更される。国軍省Deutsch版 (Reichswehrministerium) も戦争省(Reichskriegsministerium) に改称され、後に国防軍最高司令部(Oberkommando der Wehrmacht)に再編された。
  • 第二次世界大戦後のドイツ連邦共和国の軍隊の総称は Bundeswehr (連邦軍)と改名される。先の大戦で人道に反する犯罪行為を拒否しえなかった理由として挙げられた「上官の命令に絶対服従」(忠誠宣誓)の伝統を否定し、戦後のドイツ基本法には抗命権の行使が明文化されている。

プロイセン王国(1701年-1871年)

プロイセン王国時代の名称。

北ドイツ連邦(1866年-1871年)

北ドイツ連邦時代の名称。

ドイツ帝国(1871年-1918年)

ドイツ帝国時代の名称。

  • ドイツ帝国陸軍は主に下記の各王国陸軍から構成される:

ヴァイマル共和国 (1918年-1933年)

ヴァイマル共和国時代の名称。

1918年~1935年のドイツ軍の総称。Reichswehr の名称は、アドルフ・ヒトラーが1933年に政権を奪取した後も1935年のドイツ再軍備宣言までは引き続き使用された。英語ではこの時代のドイツ軍の名称の逐語訳を避け、ドイツ語原語をそのまま利用している。あるいは、やさしく表現する必要のある場合は西暦で区別して、"German Armed Forces 1918-1935" と表現する。

ナチス・ドイツ (1933年-1945年)

ナチス・ドイツ時代のドイツ時代の名称。

国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP, ナチス)が政権を掌握してからドイツ降伏までの、いわゆるナチス・ドイツ時代のドイツ軍の総称。ヒトラーは政権奪取の2年後の1935年にヴェルサイユ条約の軍備制限条項を破棄、再軍備宣言をする。そして、軍隊の総称を Wehrmacht に改名すると共に個々の軍種も改称された。英語ではドイツ語原語を用いるか、あるいは"German Armed Forces 1935-1945" と表現することもある。また、同時代にはナチ党の党軍として武装親衛隊(Waffen-SS)が編成されており、国防軍と共に第二次世界大戦を戦った。

ドイツ民主共和国(東ドイツ)(1956年-1990年)

ドイツ民主共和国(東ドイツ)時代の名称。

1949年に独立したドイツ民主共和国(東ドイツ)のドイツ軍の総称。再軍備自体は1949年頃から始まっており、兵営人民警察(Kasernierte Volkspolizei)なる内務省所属の準軍事組織を経て、1956年に国家人民軍が編成された。国境警備隊は国防省の指揮下にはない独立した戦力であったが、一時的に国家人民軍の一軍種とされた時期もある。英語では逐語訳された"National People's Army"という表現の他、単に"East Germany Army"すなわち東ドイツ軍と呼ぶ場合もある。

ドイツ連邦共和国(西ドイツ、再統一後)(1955年-現在)

西ドイツ時代の名称。

1949年に独立したドイツ連邦共和国、すなわちかつての西ドイツと現在のドイツのドイツ軍の総称。1955年の主権回復宣言後に再軍備を行い、連邦軍が編成された。英語では "German Armed Forces 1955-" と表現される。ドイツ連邦軍はプロイセン軍、ドイツ国防軍ほか過去のドイツの軍隊の後継組織ではなく、これらからは断絶した新たな軍隊とされている。(詳細はドイツ連邦軍#伝統を参照)

なお、現在のドイツ連邦軍は戦力の多くをNATOに提供しており、ドイツの首相および国防相はNATO供出のドイツ連邦軍に対する指揮権を持たない。この事実は、過去2度に渡る戦火の発端としてのドイツ、また強力な軍であるドイツ軍に対しての恐れの表れでもある。ドイツ国内においては、ドイツ連邦軍の指揮権が外国人に握られていることに対しての反発も少なからず存在している。

関連項目

戦歴

参考文献

  • 濱田常二良(毎日新聞社ドイツ特派員〈1935-1940年〉) 『独逸軍部論』 昭和刊行会、1940年