トリブヌス・プレビス

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トリブヌス・プレビス tribunus plebis

ローマ共和政期のプレプス (平民) の権利擁護のためにおかれた官職。護民官と訳される。パトリキ (貴族) とプレプスの抗争から生れ,国政外的な官職として両身分の対等化,国政の民主化のために働くものだったが,両身分が対等となり,貧富の対立が現れてくると本来の性格を失い,元老院の傀儡と化した。歴史家リウィウスによれば,前 495年のプレプスのローマ退去事件から両者の妥協として生れたとされるが,トリブスの世話役,部隊長を起源とする説もある。その身分は神聖不可侵とされ,政務官の行政,選挙,立法,徴兵,元老院決議に拒否権をもち,平民会を司会し,プレプスの裁判権も有した。同僚 (最初は2~5人だったが,のち 10人に落ち着く) が互いに拒否権を発動しえたので,元老院はしばしば一方を買収し味方とした。前2世紀頃からトリブヌス・プレビス職を経た者は元老院議員資格を有し,再任禁止の慣例が生じた。グラックス兄弟の改革はこの慣例を破り,本来のトリブヌス・プレビスの姿を取戻そうとした。以後閥族派 (オプチマテス ) の敵視を受け,権限を縮小されたが,ユリウス・カエサル,アウグスツスはみずからトリブヌス・プレビスとなり,旧権を回復させた。帝政期に機能を喪失し,プレプスが元老院議員資格を有するための存在意味しかもたなくなった。