トランペット
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B♭記譜 |
トランペットは、金管楽器の一種である。略称は「Tp」「Trp」など。語源は貝殻の一種を意味するギリシア語のstrombosであるとされる[1]。
管は全体としては円錐形だが、全長の1/4から1/3ほどは円筒形であり、長円状に巻かれている。その中ほどに3つ(稀に4つ)のピストンまたはロータリー式のバルブを備え、バルブによって管長を変えて音高を変化させる[1][2]。
様々な調性のものが存在し、最も一般的なのは変ロ調(B♭管)とハ調(C管)で、ハ調を除き移調楽器である。
Contents
トランペットの種類
管長による分類
トランペットはこれまでにほとんどの調子の楽器が製作されており、管長の違いで調子が異なる。C管やE♭管、D管等はオーケストラでよく用いられ、吹奏楽およびジャズではB♭管が標準となっている。なお、標準的なB♭管でマウスピースをつけた演奏時の管長は約137cm程度である。
標準的なB♭管に対して管長が半分でおよそ一オクターブ上の音域を担当する楽器を、ピッコロトランペットと呼び、調性はC管、B♭管、A管が一般的である。(大抵はオプションパーツの組み合わせで調子が変えられるようになっている。)なお、管長が半分なので基音は通常のトランペットよりも高いが、高次倍音が出しやすくなるわけではない。高音を低次倍音で出せるおかげで高音域で音程が安定したりコントロールが容易になるのが特徴である。
標準のB♭管の長さのものを二重巻きにして、サイズを小さくしたものをポケットトランペットと呼ぶ。コンパクトで携帯に便利だが、吹奏に多少の抵抗感がある。
長いものは、アルトトランペット(管長2 m前後)やバストランペット(管長3 m)と呼ばれる。
機構による分類
トランペットはバルブの構造によって分類できる。
- ピストン・トランペット
- ピストンバルブにより管長を変化させる。日本、アメリカ、フランスなどで最も一般的に使用されているトランペット。軽快な音色で、ジャズにはこれが好まれる。ヨーロッパではジャズトランペットと呼ばれることもある。
- ロータリー・トランペット
- ロータリーバルブにより管長を変化させる。ドイツ、オーストリア、オランダ、北欧などでよく用いられる。重厚な音色なので、日本やアメリカのオーケストラでも演奏曲目によって用いられることがある。
- スライド・トランペット
- ソプラノ・トロンボーンと形状が似ており、主に19世紀のイギリスで用いられた。ポルタメントやグリッサンドを効果的に使いたい場合に用いられる。
- ダブル・ベル・トランペット(ツイン・ベル・トランペット)
- 2つ以上の楽器の役割を1つにまとめた楽器を意味する「複合楽器」(duplex)として考案された楽器。トランペット本来のベルと上方に飛び出たベルの2つのベルを持ち、音色より音の方向性を大切にする。異なる種類の弱音器に付け換えることによって音色を瞬時に変化させることもできる。バルブによって音の出るベルを切り替える。ユーフォニアムにもこの例がある。
- ナチュラル・トランペット
- バルブの機構が1815年頃に発明される以前のトランペットで、円筒形の直管にベル(朝顔)が付いただけのシンプルな楽器である。単なる1本の管なので、基本的には倍音しか出せない。したがって、音階すべてを吹奏できず、主に軍事的な信号楽器として使われた。その歴史は紀元前7世紀のアッシリアやヘブライ語聖書(いわゆる旧約聖書)、ギリシア、古代ローマまで遡ることができ、今日でもヨーロッパ以外の地域で同族の楽器が使用されている。
- ヨーロッパにおいてはルネサンスの頃に管を曲げる技術が加わり、持ち運びの容易なS字型のトランペットが現れた。また、スライド・トランペットも開発され教会内で使用された。両端を180度折り曲げ環状にした一般的なナチュラル・トランペットの形状はセバスチアン・フィルディングの『音楽論』(1511年)の挿絵にその初期の姿を見ることができる。その他の形状としては、渦巻き状にしたものやハンドストップ・トランペットのようにベルに手が届くように反り返らせたものなどがある。
歴史
原初(中世まで)
金管楽器の祖先は新石器時代のメガフォン型ラッパにさかのぼり、エジプト王朝時代には金属製の軍用ラッパがすでにあった。この時期までの楽器はホルンともトランペットとも分類できず、むしろ単にラッパの祖先と解した方が適切である。
歴史上最も古いものは、およそ3千年前のエジプトの出土品の中に見られる。材質は金、銀、青銅のほか、土器、貝、象牙、木、樹皮、竹、瓢箪などで、形や長さも様々であり、初期のトランペットには音孔やバルブ機構などはなかったので、出せる音は倍音のみに限られていた。
ホルン(角笛)から分かれて、はっきりトランペットの祖先といえる楽器は、ギリシア・ローマ時代になって初めて出現する。ギリシアではサルピンクス (salpinx)、ローマではチューバ (tuba) あるいはリトゥス (lituus) と呼ばれた。この楽器は管長がすでに 1mを超え、管は角と金属を継ぎ合せて作られ、マウスピースはカップ型であった。さらに青銅器時代に北欧にはルーレル (lurer) と呼ばれる2本1組として使われるラッパもあった。この楽器の管は円錐形で、むしろコルネットの祖先に見えるが、管がS字型に曲がっていることが形の上でトランペットあるいはトロンボーンの先駆とも言える。
中世・ルネサンス時代
10世紀頃ヨーロッパ各地においては、ツィンク (Zink) が作られるようになっていた。この楽器は象牙または木の管に穴を開けて、倍音以外の音も出せるようにしたものである。このシステムはペルシアからヨーロッパに流れてきたといわれている。当時は2〜4つの穴が開けられていたものであったが、15から18世紀の間に、フルートからヒントを得て、表に6つと裏に1つ、計7つの穴が開けられ、音階の演奏が可能になった。ツィンクは19世紀まで用いられていた。
12世紀に入ると管を接続することが可能になる。チューバ、リトゥスはビザンチンを通ってアラビアの影響を受け、非常に長い楽器が作られるようになり、管形が円筒に近づいていった。中世初期のこの円筒形のトランペットは、クラーロ (claro) あるいはブイジーヌ (buisine) と呼ばれていた。
1240年には、イタリアのフェデリーコ2世がトゥベクタ (tubecta) という楽器を作らせた記録があり、この言葉がトロンベッタ (trombetta) あるいはその後ダンテ・アリギエーリの詩に初めて現れるトランペット (trumpet) という語の起こりである。トゥベクタもローマ時代のチューバという語の縮小形である。この楽器がどのような形であったか不明であるが、現在のトランペットにかなり近づいたS字形の管を持つ楽器は、1400年に最古の資料が残っている。
それから30年後には現代と同じ巻管のものが現れた。当時巻管のものはクラリオン (clarion)、直管のものはトロンバ (tromba) との古文献の記載があるが、前者は高音域用のトロンバ(トランペット)のことで、楽器の構造が異なるところはない。長い楽器は基音(第1倍音)が低くなるので、高次の倍音が出しやすく、バロック時代に至ると簡単なメロディーが演奏できるようになった。
近世
16世紀に入って、トロンバ・ダ・ティラルシ(Tromba da Tirarsi, 独:Zugtrompete)という楽器ができた。これはスライド・トランペットのことで、18世紀後半までドイツの教会内で使用されたが、音程は長3度までしか下げられなかった。なお、19世紀の英国でよく用いられたトロンボーン型のスライド・トランペットとは動く部分が異なる。
また、この頃には戦場トランペット等の信号業務以外に、宮廷のトランペット楽団が各音域に分かれ、音楽的に合奏されるようになってきた。1511年の木版画には、フェルト・トランペット (felt-trumpet) とクラレータ (clareta) という2種の音域用のトランペットが描かれている。前者は低次倍音で信号業務を行う戦場トランペットであり、後者は高次倍音で野外トランペット楽団においてトップパートを担当する。高音域は音階における倍音の間隔が狭いため、協奏曲などの旋律を吹奏することができ、ドレスデンでは20人程のトランペット奏者でミサやテ・デウムが演奏されていた。この音域は17世紀には「クラリーノ (Clarino)」と呼ばれるようになり、高音域用の楽器やそのパートを指す意味にも使われることがある。
近代
19世紀初頭、ドイツのブリューメルが、カステン・ヴェンティル (Kasten Ventil) を発明した。ヴェンティルとはドイツ語で弁のことである。この楽器は2つのバルブから出来ていて、第1バルブは1音、第2バルブは半音下げることが出来た。1825年にシェスターが作ったカステン・ヴェンティルは、すでに3つのバルブが付いている。さらに1827年にはフランス人のラバイェによってピストンが発明された。また、ウィーンではウールマンによってウィンナー・ヴェンティルが発明された。1832年にウィーンで、ヨセフ・リードルがカステン・ヴェンティルを改良し、初めてロータリー式を発明した。
そして1839年にパリにおいて、ペリネが現在のものとほとんど同じ3本ピストンのトランペットを発明し、形の上では一応完成されたが、まだ問題点が残っており、ベルリオーズやリヒャルト・ワーグナーは、この楽器の発明後もあえてナチュラル・トランペットを使い、旋律的な部分はコルネットを使用している。19世紀のバルブを持つトランペット(F管が一般的)は、管長が現代のトランペットよりも長く、現代のヘ調(F管)のアルト・トランペットと同じ長さでありながら音域はその1オクターヴ上の領域であった。ナチュラル・トランペットにバルブ装置を付けたという発想の楽器で、引き続き高次倍音を用いていたために旋律を奏する際の音の的中率は低次倍音を使用しているコルネットに及ばなかった。今日のトランペットは低次倍音を使用しているコルネットにその範を求めて改良開発されたものである。
著名なトランペット奏者
- クラシック
- 参照: [[クラシック音楽の演奏家一覧#トランペット奏者]]
- ジャズ
- 参照: [[ジャズ音楽家の一覧#トランペット]]
- その他
- ニニ・ロッソ
- メイナード・ファーガソン
- 桑野信義
- 数原晋
- 藤川賢一
- Tama (ベーシスト)
- エリック宮城
- NARGO(東京スカパラダイスオーケストラ)
- 横山裕(関ジャニ∞)
主なメーカー
- 日本
- アメリカ
- Vincent Bach(ヴィンセント・バック)
- レノルド・シルキー
- Calicchio(カリキオ)
- KING(キング)
- Benge(ベンジ)
- Holton(ホルトン)
- GETZEN(ゲッツェン)
- スペイン
- Stomvi(ストンビ)
- イギリス
- BESSON(ベッソン)
- ドイツ
- B&S(ビーアンドエス)
- Monke(モンケ)
- Berndt C. Meyer(マイヤー)
- K&H(キューンルアンドホイヤー)
- オーストリア
- Lechner(レヒナー)
- ルクセンブルク
- BSC(ブラスサウンドクリエーション)
- スイス
- INDERBINEN(インダービネン)
- 台湾
- JUPITER(ジュピター)
- XO(エックスオー)
- Marcato(マルカート)
教則本
ジャン=バティスト・アルバン(アーバン)による「アーバン金管教本」が古くから標準的な教則本として用いられてきた。日本ではエチュード、小曲と独奏曲、独奏曲のピアノ伴奏譜の3巻に分けて全音楽譜出版社から出版されている。
- J.B.アーバン著、E.F.ゴールドマン、W.M.スミス編 『アーバン金管教本1』 ISBN 978-4115482111
- J.B.アーバン著、E.F.ゴールドマン、W.M.スミス編 『アーバン金管教本2』 ISBN 978-4115482128
- J.B.アーバン著、E.F.ゴールドマン、W.M.スミス編 『アーバン金管教本3』 ISBN 978-4115482135
脚注
- ↑ 1.0 1.1 下中直也(編)『音楽大事典』全6巻、平凡社、1981年
- ↑ YAMAHA楽器解体全書PLUS
関連項目
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