トラック野郎・爆走一番星
トラック野郎 爆走一番星 | |
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監督 | 鈴木則文 |
脚本 |
鈴木則文 澤井信一郎 |
出演者 |
菅原文太 愛川欽也 あべ静江 春川ますみ 加茂さくら 研ナオコ 夏八木勲 織本順吉 山城新伍 田中邦衛 |
音楽 | 木下忠司 |
撮影 | 飯村雅彦 |
製作会社 | 東映 |
配給 | 東映 |
公開 | 1975年12月27日 |
上映時間 | 96分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 7億7700万円[1] |
前作 | トラック野郎・御意見無用 |
次作 | トラック野郎・望郷一番星 |
『トラック野郎・爆走一番星』(トラックやろう・ばくそういちばんぼし)は、1975年(昭和50年)12月27日公開の日本映画。
満艦飾のトラックが日本全国津々浦々駆け巡り、主人公・一番星こと星桃次郎に菅原文太、相棒・やもめのジョナサンこと松下金造に愛川欽也、マドンナ・高見沢瑛子にあべ静江、ライバル・ボルサリーノ2に田中邦衛が扮して巻き起こす「トラック野郎シリーズ」第2弾。1976年(昭和51年)の正月作品として公開された。『爆走一番星』は当時の東映社長・岡田茂による命名。[2]。
7億7700万円の配給収入を記録、1976年の邦画配給収入ランキングの第7位となった[1]。
ストーリー
新潟の山中を進む一台のバス。中では女子学生の一団が「里の秋」を合唱していた。そこに割り込む男性の声。11トン車・一番星号の運転手・星桃次郎(菅原文太)と、4トン車・やもめのジョナサン号の運転手・松下金造(愛川欽也)の二人である。彼らは引率の女教師(研ナオコ)をからかい、「心のこり」を女生徒たちと合唱した。
須間田三四郎(山城新伍)と邂逅後、東京に戻った二人は荷下ろしで汗を流す。その後、桃次郎は写真屋(由利徹)で見合い写真を撮る。その写真をソープ嬢たちに見せ、「見合いする」、「結婚は神聖」、「一度は処女とセックスしたい」と、まだ見ぬ出会いに期待を寄せていた。
後日。姫路の台貫場では、警官・赤塚周平(なべおさみ)に運転手の宮崎(宮崎靖男)が苦しめられていた。その横を、一番星号を牽引したジョナサン号が通過する。一番星号には「故障車」の張り紙が。しかし、赤塚は偽装と見抜き、原付で追跡。嫌がらせに排ガスを浴びせた一番星号だったが、偶然通りかかったバキュームカー雲竜丸にも浴びせてしまう。怒った運転手・杉本千秋(加茂さくら)は追い越し、車線を塞いで停車。助手の堀釜太郎(ラビット関根)共々降りてくる。桃次郎と言い合いになり、バキュームカーのホースを向ける展開に。そこに赤塚が追いついてくるが、開き直った桃次郎の剣幕に負け、通行を許してしまう。
桃次郎とジョナサンはドライブイン「おふくろ」で停車、大をするためトイレに駆け込む。紙がないため、桃次郎が店内に貰いにいく羽目に。店主の蝶子(園佳也子)が取りに行く間に、女子大生の高見沢瑛子(あべ静江)が紙を差し出す。その瞬間、星がチカチカと輝き、一目惚れする桃次郎。紙を持ってきてくれた蝶子に「僕はウンチなんかしない」、「下品な!」とカッコつけてしまう。瑛子はこの店でアルバイトしており、太宰治のファンだった。津軽出身のジョナサンと意気投合する瑛子。だが桃次郎は「ダザイ」という名の果物と勘違いし、失笑を買ってしまう。
店を出て野外で排便する桃次郎だったが、紙がないのは解消されていなかった。ジョナサンは通りがかった雲竜丸を止める。「商売の邪魔」と機嫌の悪い釜太郎だったが、千秋は素直に紙を差し出した。見直すジョナサン。
桃次郎とジョナサンは博多へ。そこでやっと太宰治が小説家だと理解する。桃次郎は「紙をくれた女(瑛子)」に見合い写真を渡すようジョナサンに頼むが、ジョナサンは千秋のことと勘違いしてしまう。
太宰治全集を揃えた桃次郎は、詰襟の学生服に身を包み「おふくろ」へ。外で待っている間に、ジョナサンが見合い写真を渡す手はずだった。ジョナサンから「うまくいきそう」と聞かされ、店内の様子から誤解した桃次郎は、瑛子との仲を取り持って貰おうと雲竜丸を追いかける。だが、見合い写真は千秋に渡っており、彼女は桃次郎を意識し始めていた。瑛子の事を中々口に出せない桃次郎は、うっかり取っ手を捻ってしまい、千秋ともども逆流する糞尿を浴びてしまう。
千秋のアパートで風呂に入った桃次郎。服も洗濯され軒先に掛かっている。そこへ赤塚が帰宅。彼は隣の部屋だった。今日は千秋の誕生日であり、バースデーケーキを持っていた彼だったが、釜太郎から桃次郎を「フィアンセ」といわれ、さらに室内の会話を誤解し、「千秋が桃次郎に処女を捧げた」と思い込む。意気消沈する赤塚だったが、一緒に聞いていた釜太郎は喜んでいた。迎えにきたジョナサンにも誤解が伝わってしまう。階下から祝福するジョナサン。
そのジョナサンには、公道で大型ダンプ「ボルサリーノ2」と、その配下のダンプ「ボルサリーノ3」、「ボルサリーノ4」が襲い掛かっていた。相手の正体が判らないジョナサンだったが、ボルサリーノ2(田中邦衛)は「思い出すまで付きまとう」と言い残し去っていく。
川崎に戻ったジョナサンは、結婚14年目にしてやっと新婚旅行に出かけることに。目的地は長崎である。その会話の中で、ジョナサンが千秋に見合い写真を渡したことを知る。一刻も早く誤解を解きたい桃次郎だったが、「子供を乗せて貰わないと困る」、「見合い写真の始末は任せて」と君江(春川ますみ)にいわれ、その場は思い留まる。
途中の厳島神社で記念撮影の際、掃除人夫(織本順吉)と知り合いになる。彼は出稼ぎだったが、不景気のため仕送りも滞っているという。
長崎で出会った少年ユウイチに案内され、ジョナサン一家は観光を楽しむ。姉の小野薫(千葉由美)の元へジョナサン一家を引き連れて帰宅するユウイチ。案内料として得た500円札を得意げに姉に見せる彼だったが、しかし薫は返すように諭す。薫と弟は父子家庭であり、父親は一年前から出稼ぎに出ていたが、二人は他人に頼らず生きてきたのだった。不憫な幼い姉弟に同情するジョナサン一家と桃次郎。
帰路、「おふくろ」に立ち寄るジョナサン一家と桃次郎。そこで桃次郎は土産を瑛子に渡そうとするが、彼女は男(夏八木勲)と部屋にいるという。心中穏やかでない桃次郎は焦って彼女の部屋に向かうが、男(片岡光二)を兄だと紹介され、安堵する。傷心の瑛子は、桃次郎に九州行きを頼むのだった。
店内では千秋が訪れていた。ジョンサンと君江は桃次郎のことを扱き下ろし、彼女に愛想尽かしをさせようとするが、彼女の決意は揺るがなかった。困り果てたジョナサンは店の裏で桃次郎に土下座するが、桃次郎は怒り狂う始末。そしてその様を物陰から千秋が見ていた。嘆く千秋。
後日の夜。「おふくろ」にボルサリーノ2が部下と現れる。ジョナサンが「花巻の鬼台貫」だったことに触れ、部下にジョナサンを責めさせる。止めに入る蝶子だったが、あっさりと追い払われる。110番をかけようとする蝶子だったが、それは桃次郎に止められた。そして割って入る桃次郎。彼とボルサリーノ2の一騎討ちに展開する。店内での大暴れは互角で、家具や備品を壊しながら続いたが、今度はジョナサンが間に入った。
ボルサリーノ2は、ジョナサンに対して甘い態度を取る連中に苛立ち、身の上を話し始める。18歳の時に父親が死に、山奥の土地を売って小さなトラックを買ったものの、代金が足らず借金をしていた。病気の母親を抱え、違反しなければ生活ができない。そこに花巻の鬼台貫が摘発を繰り返していたのだ。結果、彼は逃走中に事故を起こしトラックは壊れ、母親は病院を追われ死亡した。
ジョナサンとの決着にハンドルでの勝負を申し出るボルサリーノ2。受けるジョナサンだったが、桃次郎が不意打ちで気を失わせ、代わりに勝負を買って出る。
夜の街道レースは互角だったが、気を取り戻したジョナサンが追跡、正面から勝負に割り込む。レースは中断となり、ジョナサンの身の上を聞いたボルサリーノ2は勝ちを桃次郎に譲り、去っていく。
後日、一番星号は瑛子を乗せ、長崎へ。現地では小野姉弟と合流し、観光を楽しむ。兄との難しい仲を仄めかした瑛子に、「勇気とは自分で踏み切るもの」といってしまう桃次郎。夜はジョナサンも交え、小野家で鍋をつついていた。そこに、小野姉弟の父親からの手紙が届く。大晦日には帰ってくる、と。そこで父親の写真を見せられた二人。それは厳島神社で出会った掃除夫だった。
姫路に帰った瑛子の元に、兄が訪ねてくる。彼は実兄ではなく、義理の兄だった。姉の元夫であったが、瑛子とは惹かれあっていたのだ。だが、瑛子は義兄を突き放す。
一番星号は姫路を通りがかっていた。そこを赤塚が発見し、原付で追跡する。彼は「千秋の仇」と桃次郎を逮捕しようとするが、桃次郎に一蹴される。千秋への愛を声に出す赤塚だったが、彼は飲酒していた。追いかけてきたパトカーに収容される赤塚。その一部始終を、千秋は見ていた。
夜になり、懲戒免職になった赤塚は署から出てくる。そこを、待っていた一番星号に乗せられる。トラックは「おふくろ」へ。中には文金高島田と着物で正装した千秋が待っていた。ジョナサンとおふくろが仲人となり、二人の挙式が始まる。
12月30日。ジョナサンは大晦日に間に合うよう、長崎の小野姉弟の元へ向かう。自宅での準備中に、ハネムーンベビーの受胎を知らされるジョナサン。
大晦日、意を決して「おふくろ」を訪れた桃次郎だったが振られてしまう。桃次郎に「勇気とは自分で踏み切るもの」といわれたことが切っ掛けで、瑛子は義兄の元へ行くことを決心したのだった。
当て所なく一番星号を流していたところ、岡山で小野姉弟の父親・松吉と遭遇。「金がないので帰れない」と当たり屋をしていた松吉を乗せ、0時までに間に合わせようと一番星号は長崎に向かう。
ジョナサンは長崎に着いていたが、薫は熱を出して寝込んでいた。だが、手紙で約束した父親は、まだ帰ってこない。
一番星号は白バイを皮切りに、次々とパトカーに追われる。ボルサリーノ2の援護で警察の追跡を振り切り、爆走する一番星。さらには他のトラックも駆けつける。
日が暮れ、夜道を疾走する一番星号。桃次郎は松吉に金を渡す。0時前に無事に着き、薫も元気を取り戻すのだった。
スタッフ
- 監督 - 鈴木則文
- 企画 - 高村賢治、天尾完次
- 脚本 - 鈴木則文、澤井信一郎
- 音楽 - 木下忠司
- 主題歌 - 菅原文太、愛川欽也(東芝EMI/東芝レコード[3])
- 一番星ブルース(作詞:阿木燿子 / 作曲:宇崎竜童 / 編曲:ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)
- 挿入歌 - ダウン・タウン・ブギウギ・バンド(東芝EMI/EXPRESS)
- トラックドライビングブギ(作詞:阿木燿子 / 作曲:宇崎竜童 / 編曲:ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)
- 挿入歌 - 西来路ひろみ
- 残り火の恋(作詞:鈴木則文 / 作曲・編曲:猪俣公章)
- 撮影 - 飯村雅彦
- 照明 - 山口利雄
- 録音 - 井上賢三
- 美術 - 桑名忠之
- 編集 - 鈴木宏始
- スチール - 藤井善男
- 助監督 - 澤井信一郎
- 企画協力 - (株)カントリー
- 協力
- 現像 - 東映化学
- 製作 - 東映
※ 挿入歌「残り火の恋」は実際には使用されていないに等しい。備考参照。
出演
- 星桃次郎(一番星) - 菅原文太
- 高見沢瑛子 - あべ静江
- 松下君江(母ちゃん) - 春川ますみ
- 杉本千秋 - 加茂さくら
- 赤塚周平(警官) - なべおさみ
- 須間田三四郎(トルコの帝王) - 山城新伍
- 写真屋 - 由利徹
- ポルノショップのお兄ちゃん - 笑福亭鶴光
- 蝶子(ドライブイン「おふくろ」の店主) - 園佳也子
- 小野松吉 - 織本順吉
- 土産物店の店員 - 西来路ひろみ
- 堀釜太郎 - ラビット関根(関根勤)
- 中年のにやけ男 - 大泉滉
- 厚化粧の女 - 三原葉子
- ヤクザ - 藤山浩二
- 佐久の鯉太郎 - 佐藤晟也
- テル美 - 叶優子
- ナオ美 - 城恵美
- ボルサリーノ3[4] - 佐藤京一
- 上州丸 - 相馬剛三
- ボルサリーノ4[5] - 小林稔侍
- 姫路丸 - 団巌
- 警官 - 土山登士幸
- 倉庫係員 - 大木晤郎
- 横綱 - 飯塚文雄
- 町子(ウェイトレス) - 笠井うらら
- イサ美 - 宮崎あすか
- ヤクザ - 亀山達也
- 北海の虎 - きくち英一
- 運転手 - 三上良
- マス美 - 小川レナ
- ミドリ(ウェイトレス) - 岡田京子
- 関東無宿 - 清水照夫
- 運転手 - 沢田浩二
- 運転手 - 幸英二
- ヤクザ - 司裕介
- 警官 - 高並功
- 運転手 - 高月忠
- 運転手 - 宮地謙吾
- 運転手 - 横山繁
- 宮崎 - 宮崎靖男
- ヤクザ - 奈辺悟
- 台貫場の警官 - 山浦栄(ノンクレジット)
- 松下幸之助 - 梅地徳彦
- 松下幸次郎 - 梅津昭典
- 松下美智子 - 白取雅子
- 松下華子 - 菊地優子
- 松下幸三郎 - 大久保純
- 松下サヤ子 - 高橋直美
- 松下由美 - 角所由美
- 松下幸四郎 - 一条寛之
- 松下幸五郎 - 吉崎勝一
- 小野薫 - 千葉由美
- 蒲田拓己
- 小牧準
- 八東会(「ボルサリーノ2」の行灯の上に表記あり)
- ボルサリーノ2 - 田中邦衛
- 片岡光二 - 夏八木勲
- 女教師 - 研ナオコ(特別出演)
- 松下金造(やもめのジョナサン) - 愛川欽也
- 以下ノンクレジット
備考
- 挿入歌
- 西来路ひろみの歌う「残り火の恋」であるが、実際はほとんど聞こえない。これには長年、ファンから監督の鈴木則文に問い合わせがあった。鈴木の記した『新トラック野郎風雲録』(ちくま文庫、2014年)103頁によると、「製作途中で挿入歌とする決定がされたが、脚本を直す間がなく、作品にも合わない。仕方なく、「町のどこかから聞こえてくる」という設定にしようしたが、音を絞りに絞ったので、ほぼ聞こえない状態」に仕上がったという。作詞を依頼してきたのは西来路の事務所の社長であり、根負けして引き受けたが、映画で使用するとは聞いてなかった(同101-102頁)。なお、西来路ひろみは「土産物店の店員」として出演している。
- バキュームカー「雲竜丸」
- 本シリーズの車両は、原則として一番星号・ジョナサン号のみ東映で所有しており、他の車両は実在する車両を借り受けて撮影されていた。本作に登場するバキュームカー「雲竜丸」も実際に使用されていた車両で、「デコレーションを施したバキュームカーがある」と噂を聞きつけ、採用となった。なお、逆流する糞尿は作り物である。
- 関連玩具
- ポピー(現:バンダイ)の「ポピニカ」より、本作で桃次郎が乗るトラックが「トラック野郎 生れてすみません」としてキット化された。乾電池によりコンテナ部のライトが光るギミックが付いている[6]。
同時上映
参考文献
- 鈴木則文、宮崎靖男、小川晋 『映画「トラック野郎」大全集:日本最後のアナーキー・プログラム・ピクチャーの伝説」』 洋泉社〈別冊映画秘宝 洋泉社MOOK〉、2010年。ISBN 978-4-86248-468-0。
- 杉作J太郎、植地毅 『トラック野郎 浪漫アルバム』 徳間書店、2014年。ISBN 978-4198637927。