スーパーインポーズ (映像編集)
スーパーインポーズ (英語: superimpose) は映像技術用語の一つ。superimpose は「複数のものを重ね合わせる」という意味の英語で、映画フィルムの上に字幕を書き込んだフィルムを載せて焼き付けたことから、こう呼ばれる。転じて、フィルムに限らず映像に文字や図形や他の映像を重ねること、または重ねたものをこう呼ぶ。スーパーインポーズを略して「スーパー」とも呼ばれる。スーパーインポーズでつけられた字幕を「字幕スーパー」と呼ぶ。
テレビジョン技術におけるスーパーインポーズは「テロップ」とも呼ばれる。元々テロップ (Telop)とは「テレビジョン・オペーク・プロジェクター」(Television Opaque Projector = テレビ投射映写機)と呼ばれる装置の商標名で、これをCBSと共同開発したGRAY社の商標であったが後に一般名詞化された。
テロップ
黎明期のテロップは「オペークカード」と呼ばれる縦10センチメートル×横12.5センチメートルの紙などの不透明なカードに文字(白地に黒文字または黒地に白文字)を手書き、あるいは写真植字機や和文タイプライター、ワードプロセッサなどで印刷出力した物を、テレビジョン・オペーク・プロジェクター装置に装填する。キャタピラーと呼ばれる鎖状に連結されたフォルダー2本に交互に入れ、2台のカメラを切り替えながら撮影して台本順に放送するというものであった。装置ではカードを電気信号(映像信号)に変換して出力し、この文字の映像信号を下地の映像信号に重ね合成(スーパーインポーズ合成)を行っていた。このスーパーインポーズ合成を行う映像信号処理回路はスーパープロセッサと呼ばれていた。
1970年代前半に、コンピュータのキーボードで出力した文字をコンピュータ処理により映像信号として発生させる「キャラクタージェネレータ」(CG) と、元の映像との合成を電子的に行うスーパー付加装置が登場。NHKではアニメーション以外の殆どの番組(クレジットタイトルや字幕)で順次採り入れられたが、民放では報道番組から導入され、1980年代までにテレビドラマやバラエティ番組にもオペークカード(手描き)によるスーパー表示と併用される形で普及した。テレビアニメでは1990年代中頃からCGによるスーパー表示が普及するようになった。
1990年代よりノンリニア編集装置の機能として組み込まれていることも珍しくなく、またパソコンから直接入力できるようにもなっており、日本国内においてはほぼすべての放送局においてオペークカードを用いた送出方法は姿を消し、コンピュータを使った入力・送出方式が一般的になっている。
映像付きのビデオカラオケ(レーザーディスク・VHD)では、黎明期の1980年代前半からCGによる歌詞表示となっている。また、通信カラオケでは、映像自体にはスーパーが含まれておらず、再生時に機器内蔵のコンピュータで生成されたスーパーをリアルタイム合成させて表示する形態となっている。
映像編集で用いるプロダクションスイッチャにおいても、映像同士の合成機能とは別に、スーパー合成を行う機能が充実している。また放送局の主調整室(マスター)で用いられるDSK (Downstream Keyer) も各種スーパー合成機能を備える。これは番組制作現場から独立した情報、例えば時計表示、天気予報、速報などを合成するために用いられる。
テロップの使用状況
バラエティ番組
音楽番組
コマーシャル
民放では1975年まで番組中に提供スポンサー等によるテロップCMが多く見られた。同年CM総量規制を日本民間放送連盟が打ち出し、テロップCMを全廃させた。
現在は民放連放送基準150条に「スーパーインポーズは、番組中においてコマーシャルとして使用しない」と明記されている。
世界のテロップ
世界では、英国放送協会(BBC)をはじめ、多くの報道番組、ドキュメンタリー番組でテロップが使用されている。韓国のバラエティ番組などでは日本と同様のテロップの使い方がされ、また中国のテレビジョン放送は方言の多様性から漢字(中文)での字幕がほとんどの番組で付けられている。