テストステロン

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テストステロン(testosterone)は、アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性ホルモンの一種。

生成・分泌

哺乳類のオスでは睾丸で95%、副腎で5%、メスでは卵巣や副腎から男性の5-10%程度ながら分泌される。

作用

  • 筋肉増大。
  • 骨格の発達。
  • 女性の男性ホルモン分泌の分泌量は前述通り男性の5-10%程度で、陰毛の発毛に関与する。

性ホルモンとしての作用

胎生期、妊娠6週目から24週目にかけて大量のテストステロンが分泌される時期があり、これにさらされること(アンドロゲン・シャワーと呼ばれる)によって、脳は女性的特徴(ホルモン分泌の周期性)を失う。なお、男性外生殖器の形成に関係するのは、5αリダクターゼにより、代謝されたジヒドロテストステロン(DHT)によるもの。

男性は睾丸容量が4ml以上となると思春期に入り、血中テストステロンが測定可能となる10ng/dl超となる[1]。その後精巣がさらに増大と共にテストステロンの分泌もさらに増大し男性的な身体の特徴が形作られる(二次性徴)。

一般に30歳ごろから減少しはじめ、年1-2%の割合で減少する。テストステロンの減少は男性更年期と呼ばれるが、女性の更年期ほどには急激にホルモン分泌は変化せず、身体や精神に与える影響も個人差が大きい。ストレスなどで急激な減少を起こすと、男性更年期障害を起こす。テストステロンの減少率は個人差が大きく、70代になっても、30代の平均値に匹敵するテストステロン値を維持している男性も多い。20代から40代でテストステロンが低い場合は、2型糖尿病、メタボリック症候群のリスクが増大すると報告されている[2]

テストステロンリバウンド療法

精子形成障害において、アンドロゲンを大量投与することでゴナドトロピンの分泌を抑制し一時的に無精子症に陥らせ、その後投与を中止することでリバウンド的にゴナドトロピンを大量に分泌させ、活発な造精を促すといった療法である。改善率、妊娠率共に良好な成績を示したが、一部において精子形成能力が完全に失われてしまうケースが見られ、1998年現在ではあまり行われていない[3]

副作用

2015年にアメリカ食品医薬品局は、テストステロンの安全性や効能はともに老化によるテストステロンの低下に関係が無いと発表した。FDAはテストステロンを含む薬などには心臓発作を起こす危険性が高まる可能性があることを警告する必要があるとしている。

心循環器系疾患

三つの査読済み研究によると、テストステロンには副作用として心臓発作を含む心循環器系に由来する疾患や死亡を増加させる可能性がある。さらに、老年期の男性の心臓発作による死亡率が30%増加すると報告されている。2010年までテストステロンが前立腺がんや心循環器系疾患などの死亡リスクに影響しているという研究は無かったが、2011年以降の研究でその懸念が強まっていることが示されている。2013年にアメリカ医師会に発表された研究では、テストステロン療法を採用することは副作用のリスクが高まることに大きく関係している、としている。

がん

進行の遅い前立腺がんが発生している場合のテストステロンはがんの進行につれ増えると考えられている。しかし、そのテストステロンと前立腺がん進行との関係性は立証されていない。とはいえ、The Journal of Urologyに掲載された論文によると、テストステロンが前立腺がんのリスクに関係していると警告している[4]

研究報告

  • 更年期うつ病の治療にテストステロン補充療法として投与する場合がある。
  • 筋力トレーニングや不安定な興奮(例えば闘争や浮気など)によってテストステロンの分泌が促される。イリノイ州ノックス大学心理学者、ティム・カッサーの研究では大学の学生らに15分間銃を扱わせたところ、唾液から普段の100倍近いテストステロン値を記録したという。このことから、危険物あるいは危険な行為が更なる分泌を促すといえる。
  • プリンストン大学の研究者はテストステロンは痛みを鈍らせる効果があることを発見した。テストステロンを投与されたスズメはされていないスズメより3倍長く痛みに耐えることができた[5]
  • 心理的には闘争本能や孤独願望(1人でいたい、干渉されたくない欲求)を高める作用をもたらす[6]
  • スイスチューリッヒ大学イギリスロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の研究では女性被験者120人にテストステロンまたは偽薬(プラシーボ)を与え、お金の取り分を交渉させる実験を行った。この実験においてテストステロンを与えられた被験者はプラシーボを与えられた被験者より正当かつ公平な申し出をし、断られるリスクを最小限に抑えようとする傾向にあった。この結果からテストステロンの投与により社会的地位に対する意識が高まり社会的地位を重視するようになったとしており、攻撃性を高めるという定説に基づくen:Testosterone poisoningを否定している[7]
  • 前立腺疾患に関与しており、前立腺癌前立腺肥大を抑えるために、抗アンドロゲン剤の投与や睾丸摘出を行うことがある。
  • アメリカの心理学者、ジェイムズ・M・ダブスはテストステロンの量が多いほど暴力的な犯罪を犯していることが分かったと述べている[8]
  • テストステロン補充療法を受けた中高年男性は、受けてない男性に比べ心臓発作や脳卒中のリスクが高まるとの研究結果が出ている[9]

ジヒドロテストステロンの作用

テストステロンは標的臓器の5αリダクターゼにより、ジヒドロテストステロン(DHT)へと代謝される。アンドロゲン受容体への結合親和性はDHTの方が高いが、テストステロン自体も結合し標的遺伝子の転写を活性化する。

テストステロン自体には禿げを起こす作用はなく、DHTに代謝されることで初めて薄毛、性欲減退を促す作用が出る。5αリダクターゼの分泌量は遺伝が関係しているため、遺伝的要因による禿げが存在すると言われる[10]

脚注


テンプレート:ステロイド