シンクレティズム
シンクレティズム(英語: syncretism)とは、相異なる信仰や一見相矛盾する信仰を結合・混合すること、あるいはさまざまな学派・流派の実践・慣習を混合することである。「混合」〔混合主義〕、「習合」〔習合主義〕、「諸教混淆」(しょきょうこんこう)ともいう。その他、日本語訳には「融合」、「混交」、「複合」、「重層」も使用されている。
シンクレティズムという概念や用語は、芸術や文化のありようを形容する際にも使われ(折衷主義とも)、政治の分野でも使われている(政治的シンクレティズム)。
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概説
オックスフォード英語辞典は英語の syncretism の初出を1618年としている。語源はラテン語の syncretismus (近世以降)であり、プルタルコスの著書『倫理論集』の「友愛」についてのエッセーに出てくる「クレタ人の同盟」を意味するギリシア語 συγκρητισμός (シュンクレーティスモス)を典拠としている。プルタルコスは、クレタ人たちが外部の脅威に直面した時に互いの相違点を捨てて歩み寄り同盟を結んだ、という例を引き合いに出して「これすなわち、かれらの謂わゆるシュンクレーティスモス〔クレタ人の同盟〕である」と述べた。
「シンクレティズム」、特に宗教、神学、神話におけるそれは、元来別々のものである複数の伝統を融合ないしは相互に類比的な関係に置き、その結果として、複数の伝統に通底する統一性があることを主張したり、他の伝統に対して包括的なアプローチを可能とする。例としては日本の神仏習合、中国における儒・仏・道の三教合一、カリブ海諸国や南米における西アフリカの民俗信仰とキリスト教のカトリック教会の信仰の混淆(ブードゥー教、カンドンブレ)などがある。
反面、一神教など排他性の強い教義は、シンクレディズムは正統を歪曲するものとし、異端として強く否定する傾向がある。キリスト教のプロテスタントの福音派はシンクレティズムを退けている[1]。日本伝道会議は「イエス・キリストでなくても救われると教える異教や混合宗教、ならびに、イエス・キリストが救い主なる神であることを否定する異端をしりぞける」[2]と宣言している。
日本におけるシンクレティズム
例えば大本(大本教)は天之御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ(『古事記』)、大本内では大国常立大神(おおくにとこたちのおおかみ))をキリスト教などに言う「万物の創造神」としており、この神は世界の各宗教にいう阿弥陀如来、ゴッド、エホバ、アラー、天、天帝などの名称で呼ばれているものすべてと同じである、とする[3]。
皇祖皇太神宮は「すべての神々を祀る神宮(たましいたまや)」「ユダヤ教・道教・儒教・キリスト教・仏教・イスラム教すべてを包含する万教帰一の神宮」であるという。天皇は元々「万国の棟梁、世界天皇」、また「世界の五色人もまた皇孫」であり、モーセ・釈迦・老子・孔子・孟子・キリスト・モハメットが皆来朝してこの神宮で修業した、と由来記に述べ[4]、モーセやキリストに関する物品[5]や古文書(『竹内文書』[6]。超古代文献と称するもの)と称するものまで有していた。
教義や信仰対象の詳細は各教派・宗派・団体の項目を参照。