ケインズ学派

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Keynesian school

J.M.ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』 (1936) の影響を受け,彼の経済理論,経済思想を中心に形成された学派をいう。 1929年に始る世界的恐慌を背景にして著わされた同書は,従来仮定されていたセーの法則を否定し,有効需要論と乗数理論を2本の柱として流動性選好利子論 (流動性選好説 ) を導入して失業と不況の原因を解明,新しい経済体制のメカニズムを理論化して多くの経済学者の賛同を得た。ケインズの一般理論を受けてまもなく登場してきた新古典派総合と呼ばれる J.ヒックス,A.ハンセン,P.サミュエルソン,L.クライン,またケインズ理論を長期動態化へ発展させた R.ハロッド,E.ドーマー,またマクロ分配論の N.カルドアらが初期ケインズ学派といえる。

彼らは 1930年代の資本主義の危機を経験して資本主義の修正をはかり,国家の完全雇用を推進するための理論を広義の国民所得決定論として展開し,経済理論を現実の社会に適用しうるようにした点に大きな特徴がある。しかし 60年代なかば以降,一般不均衡下における取引を数量調整として分析した A.レイヨンフーブド,R.クラウアー,R.バロー,H.グロスマン,J.ベナシーらは初期のケインズ解釈に対する批判から出発した。一方で,J.トービンらアメリカケインジアンが登場し,また不確実性を重視する G.シャックル,歴史的時間を重視する J.ロビンソン,J.クリーゲル,内生的貨幣供給論を唱える P.デビッドソン,H.ミンスキーなどさまざまな学説が生れ,ケインズ学派を規定することはむずかしくなっている。