クオリティ・オブ・ライフ
クオリティ・オブ・ライフ(英: quality of life、QOL)とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指し、つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。QOLの「幸福」とは、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られる。
またQOLには国家の発展、個人の人権・自由が保障されている度合い、居住の快適さとの関連性も指摘される。
したがってクオリティ・オブ・ライフは、個人の収入や財産を基に算出される生活水準(英: standard of living)とは分けて考えられるべきものである。
クオリティ・オブ・ライフと対比される概念として、クオリティ・オブ・デス(英: quality of death、QOD、死の質)がある[1]。
なお以下においては「医療上におけるクオリティ・オブ・ライフ」について述べる。
Contents
医療上の概念
QOL に対する取り組みは医療の歴史とともに発展してきた。医療は人を診るものであり医学は病気を診るものだとする考え方があったが、医療も科学的側面が強くなり、「病気は治ったが患者は死んだ」という状態が問題となった。
現状、長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患では、いたずらな延命治療、患者への侵襲が激しい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できないことが提唱された。このような状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼んでいる。
これに対して、患者が自身の尊厳をより保ち得る生活の実現を目的とした援助が重要であるという考え方が生じたのである。これを「QOL(生活の質)を維持する、向上させる」などという。
医療上の扱い
疾患は病名により医学的に定義されるが、障害もしくは合併症状の生活面の影響は、医学的には充分考慮されていない。
たとえば治療行為に伴い生じた運動・視力・食事・排泄などの障害には、それぞれに何らかの合併症名が与えられるが、障害の程度には総じて「QOL の低下」と表現される。また医学的検査で原因が不明瞭な感覚的障害(痛み、痺れ、倦怠感など)では、課題として軽視する傾向がある。障害(合併症状)の影響は患者の生活にとって重要であり、これを QOL として認識し指標化する医療上の課題がある。
癌などの治療選択や治療評価においては、生存率や縮小率などを指標とする場合が多いが、予後の QOL を考慮していない場合もある。 患者の立場からは、QOL も考慮されることが望ましいが、医療機関や医師、患者本人との価値観の差異などもあり、具体的に言及されることが少ない。最近は、インフォームド・コンセントの普及に伴い QOL の概念が重要視される傾向にある。
疾病の増悪や治療において生じた障害の生活支援として、公的な障害年金制度がある。
QOL の評価法
健康関連の QOL の評価法は、一般的に患者に聞き取るか、評価者自身が評価する。評価項目は、その文化圏で一般的な汎用評価法と、特定の疾患や病態の患者を対象とした疾患特異的評価法、QOL の構成概念の各領域ごとの評価法などがある。
汎用評価法
- Sickness Impact Profile (SIP)
- Nottingham Health Profile (NHP)
- Medical Outcomes Study 36-Item Short Form-36 (SF-36)
- EuroQoL (EQ-5D)
- Patient Generated Index (PGI)
疾患特異的評価法
- European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC QLQ-C30)
- General [Geriatric] Oral Health Assessment Index (GOHAI)
- Kidney Disease Quality of Life Short Form (KDQOL-SF)
日常生活動作
- Barthel Index of Disability (BI)
関連項目
医療との関係
労働慣行
国家の発展や居住との関係
脚注
- ↑ “超高齢社会のフロントランナー日本:これからの日本の医学・医療のあり方”. 日本学術会議 臨床医学委員会. . 2018閲覧.
参考文献
- 大井 玄『終末期医療〈2〉死の前のクオリティ・オブ・ライフ』弘文堂、1993
- 藤岡 一郎『重症児のQOL』クリエイツかもがわ、2000