キリスト仮現説

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(かげんせつ、ギリシア語: Δοκητισμός, Dokētismos、ラテン語: Docetismus、英語: Docetism)

初期キリスト教会における異端説で,キリストはその生涯を通じて真の肉体をもった現実的存在者ではなく,仮現的存在であったとするもの。これにもキリストは肉体によらずに誕生したとし,人間的な行為や受難も単なる外見にすぎず,したがってその復活や昇天も無意味であるとする立場のある一方,ウァレンチヌスらを含む穏健派はキリストの肉体を真に人間的なものではなく天上的なものであるとするにとどまる。

この異端説はグノーシス派と同じ根幹より派生し,ことにグノーシス派の著述家により支持されたが,その前提は,(1) 善なる神が悪である肉体を取ることはできない,(2) 永遠の神に死はありえないというギリシア,ペルシア,東洋に起源をもつ二元論的思想であり,キリストの神性は著しく偏重された。仮現説は初期のグノーシス主義への反対者すべてによって,ことにアンチオキアのイグナチオスにより激しく攻撃された。その論拠は主として『ヨハネの第1の手紙』の4章2,3である。