キマイラ

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キマイラ古希: Χίμαιρα, Chimaira) は、ギリシア神話に登場する怪物である。

概要

ラテン語ではキマエラChimæra, Chimaera)、ヨーロッパのいくつかの言語ではキメラChimera) といい、英語ではキメラ、キメイラ、またはカイメラChimera)、フランス語ではシメールChimère) という。名前の意味は「牝山羊」である[1]

テューポーンエキドナの娘。ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ。それぞれの頭を持つとする説もある。強靭な肉体を持ち、口からは火炎を吐く。その火炎によってしばしば山を燃え上がらせていた。リュキアに住み、カーリアアミソーダロスに育てられたが、ペーガソスに乗る英雄ベレロポーンにより火炎を吐く際に先端にの塊を付けた槍を口に放り込まれ、火炎の熱で溶けた鉛で喉を塞がれて窒息死させられた(背中に矢を射られて退治されたとする説も)。

元はヒッタイトで神聖視された季節を表す聖獣で、ライオンが春、山羊が夏、蛇が冬を象徴していた[2]

この怪物は生物学におけるキメラの語源となった。

ファイル:Gustave Moreau - La chimère.jpg
ギュスターヴ・モロー「キメラ」

中世のキリスト教寓意譚では、主に「淫欲」や「悪魔」といった意味付けを持って描かれた。12世紀の詩人マルボートによれば、様々な生物の要素を併せ持つ事から女性を表すとされている。この他、ライオンの部分を「恋愛における相手への強い衝動」、山羊の部分を「速やかな恋の成就」、蛇の部分を「失望や悔恨」をそれぞれ表すとされたり、その奇妙な姿から「理解できない夢」の象徴とされた。一般には、怪物の総称や妄想、空想を表わす普通名詞ともなっている[3]

また、フランスの画家ギュスターヴ・モローはしばしばこの名をタイトルとしながらも、翼を持ったケンタウロスの美青年など、独自の設定を課した怪物を描く作品を手がけている。

広義のキマイラ(キメラ)

上述のように、怪物キマイラは生物学の「キメラ」の語源となっている。ここでは、「異質なものの合成」という意味から「キメラ細胞」「キメラ生物」などの用語がつくられた。フランケンシュタインをして「キメラ合成生物」などと表現することもある。

フィクションに登場するキマイラ(代表的なもの)

遺伝子組み換え生物等生物兵器という意味で使われる場合もある。

ロールプレイングゲームなどのファンタジーゲームにもキマイラは登場する。ギリシア神話的世界を背景とするものだけではなく、ファンタジーゲームでは比較的ポピュラーなモンスターである。複数の生物あるいは魔物が合成された怪物として登場することが多い。

カプコンのテレビゲーム『バイオハザード』には、人間とハエの遺伝子を組み合わせた合成生物が登場し、キメラと呼ばれる。

トレーディングカードゲームデュエル・マスターズでは、闇文明に代表される種族の一つ。といったような怪物が名称通り複雑に組み合わさっており、異形のイラストが多い。

スクウェア・エニックスのRPG『ドラゴンクエストシリーズ』に登場するキメラはの胴にの頭部と翼を持った姿で描かれていたり、キメラの派生であるキメイラは普段のキメラの体にのトサカを持った姿で描かれている。 またデモンズソウルでは名称こそ違うものの、人間の身体(尋常ではない体躯)に翼、蛇の尻尾といった人間との組み合わせをしたモンスターとして描かれているものもある。 さらにカプコンドラゴンズドグマでは、神話に忠実なキメラがボスモンスターとして登場している。

ファイナルファンタジーシリーズにも、比較的神話に沿ったキメラやキマイラがモンスターとして登場する。

また、『仮面ライダーウィザード』には仮面ライダービースト/仁藤攻介と共に戦うビーストキマイラというファントムが登場している。

出典

  1. ホメーロス著、呉茂一訳 『イーリアス 下』 平凡社 2003年、541頁。
  2. 健部伸明と怪兵隊 『幻想世界の住人たち』 新紀元社 1988年、164頁。
  3. 研究社『新英和中辞典』第4版

関連項目