オシドリ
オシドリ(鴛鴦[1]、学名:Aix galericulata)は、鳥綱カモ目カモ科オシドリ属に分類される鳥類。
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分布
東アジア(ロシア南東部、朝鮮半島、日本、中華民国、中華人民共和国など)に分布する[a 1]。
日本では北海道や本州中部以北で繁殖し[2]、冬季になると本州以南(主に西日本)へ南下し越冬する[3]。オシドリは一般的に漂鳥であるが、冬鳥のように冬期に国外から渡って来ることもある。イギリスなどへ移入・定着[4][a 1]。
形態
全長オス48センチメートル、メス41センチメートル[5]。翼長はオス21-24.5センチメートル、メス21.7-23.5センチメートル[4]。翼開張は68-74センチメートル[3]。体重0.6キログラム、メス0.5キログラム[5]。
嘴の先端は白い[3]。卵は長径5.3センチメートル、短径3.7センチメートル[2]。
オスの嘴は赤く[3][6]、繁殖期のオスは後頭(冠羽)、頬から頸部にかけての羽毛が伸長し、顔の羽衣が白や淡黄色[3][6]。胸部の羽衣は紫で、頸部側面には白い筋模様が左右に2本ずつ入る[3][6]。腹部の羽衣や尾羽基部の下面を被う羽毛は白い[6]。第1三列風切が銀杏状(思羽、銀杏羽)で[4]、橙色[2][3][5][6]。メスは嘴が灰黒色[3][6]。非繁殖期のオス(エクリプス)やメスは全身の羽衣が灰褐色、眼の周囲から後頭にかけて白い筋模様が入る。また体側面に白い斑紋が入るが、オスのエクリプスでは不明瞭[3][6]。足は橙色で指に水かきがある[7]。
生態
渓流、湖沼などに生息する[2][3][6]。上高地周辺の水辺でも見られる[7]。水辺の木陰を好み、開けた水面にはあまり出ない[8]。木の枝に留まることもある[8]。
食性は植物食傾向の強い雑食で、水生植物、果実、種子、昆虫、陸棲の貝類などを食べる[2][4][5]。陸上でも水面でも採食を行う[2]。
繁殖形態は卵生。4-7月に山地の渓流や湖沼の周辺にある地表から10メートル以上の高さにある大木の樹洞(あるいはまれに地表)に巣を作り、9-12個の卵を産む[2][4][5]。メスのみが抱卵し、抱卵期間は28-30日[2][5]。
オシドリが樹洞に巣を作ることは昔から知られており、孵化した雛がどうやって地表に降りるのかは長い間謎であった。しかし後に、雛は自分で巣から地面に飛び降りることが、皇居の森にて確認されている。
孵化して40-45日で飛翔できるようになる[5]。厳冬期には数十羽から数百羽の群れをつくることもある[8]。
- Ente englischer Garten.JPG
エクリプス
- Mandarin duckling 800.jpg
雛
- Aix galericulata (female) capturing acorn.JPG
オスとドングリをくわえたメス
- Aix galericulata flocks.jpg
冬に群れで行動する
人間との関係
仲が良い夫婦を「おしどり夫婦」と呼ぶが、鳥類のオシドリは、冬ごとに毎年パートナーを替える[8][9][10][11]。
抱卵はメスのみが行う[12]。育雛も夫婦で協力することはない。
小林一茶が『放れ鴛一すねすねて眠りけり』と詠んだように、多くの句で詠まれている[10][11]。新潟県にオシドリ夫婦の民話がある[11]。
和名のオシは「雌雄相愛し」に由来すると考えられている[1]。漢字標記は鴛が本種のオス、鴦が本種のメスを指す。雌雄の仲が良いと考えられ、本種を用いた夫婦の仲が良いことを指すことわざとして「鴛鴦契」「鴛鴦偶」などがある[1]。
普通切手の意匠
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種の保全状況評価
国際自然保護連合(IUCN)により、レッドリストの軽度懸念(LC)の指定を受けている[a 1]。
日本では環境省により、レッドリストの情報不足(DD)の指定を受けている。 テンプレート:情報不足 また都道府県により、以下のレッドリストの指定を受けている[13]。
- 絶滅危惧IA類 - 三重県
- 絶滅危惧IB類 - 埼玉県、東京都(区部、北多摩と南多摩は絶滅危惧II類、西多摩は準絶滅危惧)[14]、沖縄県
- 重要保護生物(B) - 千葉県(環境省の絶滅危惧IB類に相当)[15]
- 絶滅危惧II類 - 京都府、徳島県、福岡県
- 準絶滅危惧 - 山形県、茨城県、栃木県、石川県、福井県、岐阜県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、高知県、佐賀県、大分県
- ランクC - 兵庫県(環境省の準絶滅危惧に相当)[16]
- 希少種(環境省の準絶滅危惧に相当) - 北海道[17]、滋賀県
- 地域個体群(LP) - 長野県
- 情報不足(DD) - 宮崎県
- その他 - 岩手県(Dランク)、群馬県(注目)、神奈川県(減少種)、大阪府(要注目)、奈良県(注目種)
1956年に野毛山動物園が繁殖賞を受賞し、1960年に福岡市動物園が人工繁殖で繁殖賞を受賞した。
自治体指定の鳥
日本の以下の都道府県と市町村の自治体で指定の鳥である。2008年6月に鳥取大学でのイメージキャラクターとして、県の鳥であるオシドリをモチーフにした「とりりん」が制定された。
- 都道府県 - 山形県、鳥取県、長崎県
- 市 - 飯山市、佐野市
- 町 - 十和田湖町(現在は十和田市)、大子町、相模湖町(現在は相模原市)、日野町 (鳥取県)、さつま町
- 村 - 皆瀬村 (秋田県)(現在は湯沢市)、大山田村 (三重県)(現在は伊賀市)
大韓民国の忠清南道、忠州市、論山市、抱川市、茂朱郡の指定の鳥である。
参考文献
- ↑ 1.0 1.1 1.2 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、89頁。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 環境庁 『日本産鳥類の繁殖分布』、大蔵省印刷局、1981年。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、116頁。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』、財団法人東京動物園協会、1980年、78、95頁。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 5.6 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』、平凡社、1986年、180頁。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、129頁。
- ↑ 7.0 7.1 高木清和 『フィールドのための野鳥図鑑-水辺の鳥』 山と溪谷社、2002-02-01、28-29。ISBN 4635063321。
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 『ひと目でわかる野鳥』 中川雄三(監修)、成美堂出版、2010-01、55。ISBN 978-4415305325。
- ↑ 『里山の野鳥ハンドブック』 小宮輝之(監修)、NHK出版、2011-05-06、178。ISBN 978-4140113004。
- ↑ 10.0 10.1 本山賢司、上田恵介 『鳥類図鑑』 東京書籍、2006-07、18-19。ISBN 978-4487801281。
- ↑ 11.0 11.1 11.2 “オシドリ”. サントリー. . 2012閲覧.
- ↑ 『色と大きさでわかる野鳥観察図鑑―日本で見られる340種へのアプローチ』 杉坂学(監修)、成美堂出版〈観察図鑑シリーズ〉、2002-04、158。ISBN 4415020259。
- ↑ “日本のレッドデータ検索システム(オシドリ)”. エンビジョン環境保全事務局. . 2012閲覧.
- ↑ “レッドデータブック・東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2010年版 (PDF)”. 東京都. pp. 47 (2010年). . 2012閲覧.
- ↑ “千葉県レッドデータブック−動物編(2011年改訂版) (PDF)”. 千葉県. pp. 76 (2011年). . 2012閲覧.
- ↑ “兵庫県版レッドデータブック2003・鳥類種リスト”. 兵庫県 (2003年). . 2012閲覧.
- ↑ “北海道レッドデータブック2001”. 北海道 (2001年). . 2012閲覧.