エンリケス曲面

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数学では、エンリケス曲面(Enriques surfaces)は、不正則数 q = 0 で標準ラインバンドル K が非自明であるが、二乗すると自明となるような代数曲面である。エンリケス曲面は、みな射影的であり(従って複素数体上ではケーラー的であり)、種数 0 の楕円曲面である。標数が 2 ではない体上では、エンリケス曲面はK3曲面を不動点のない位数 2 の群で割った商であり、その理論は代数的K3曲面の理論に似ている。エンリケス曲面は最初にテンプレート:Harvsで詳細に研究された。テンプレート:Harvsで、エンリケスの研究に先立ち導入されたレーイ合同(Reye congruences)のいくつかもまたエンリケス曲面の例である。

エンリケス曲面は他の体上でも定義される。標数が 2 でない体上で、Artin (1960) は理論が複素数上の理論と同じであることが示された。標数が 2 の体上では、定義が変更され、2つの新しい族が存在し、特異エンリケス曲面、超特異エンリケス曲面と呼ばれ、Bombieri & Mumford (1976) に記載されている。.

不変量

n が偶数のときは、多重種数 Pn が 1 で、n が奇数のときは、0 である。基本群は位数が 2 である。第二コホモロジー群 H2(X, Z) は、次元 10 の唯一の群のユニモジュラ格子English版(unimodular lattice) II1,9 と符号 -8 と位数 2 の群の和に同型である。

ダイアモンド

          1
      0       0
  0      10       0
      0       0
          1

マーク付きのエンリケス曲面は、連結な 10-次元の族を形成し、Kondo (1994) では有理的であることが示された。

標数 2 の場合

標数が 2 の倍は、エンリケス曲面の新しい族が存在し、準エンリケス曲面(quasi Enriques surfaces)、あるいは、非古典的エンリケス曲面(non-classical Enriques surfaces)、あるいは、(超)特異エンリケス曲面((super)singular Enriques surfaces)と呼ばれることもある。標数 2 の場合のエンリケス曲面の定義は変形されていて、極小曲面の標準クラス K が 0 に数値的に同値で、第二ベッチ数が 10 であると定義される。(2 以外の標数の定義は、この定義は通常の定義に同値である。)エンリケス曲面には 3つの族があることになる。

  • 古典的: dim(H1(O)) = 0、これは 2K = 0 であるが K は 0 でなく、Picτ は Z/2Z であることを意味する。そのような曲面は群スキーム μ2 による被約な特異ゴレンシュタイン曲面(Gorenstein surface)の商である。
  • 特異: dim(H1(O)) = 1 で、フロベニウス自己準同型が非自明に作用している。このことは K = 0 であり、Picτ は μ2 であることを意味する。そのような曲面は、群スキーム Z/2Z によるK3曲面の商である。
  • 超特異: dim(H1(O)) = 1 でフロベニウス自己準同型が自明に作用している。これは、K = 0 であり、Picτ は α2 であることを意味する。そのような曲面は、群スキーム α2 による被約な特異ゴレンシュタイン曲面の商である。

全てのエンリケス曲面は楕円的か準楕円的である。

  • レーイ合同(Reye congruence)は、P3 の中の 4次曲面の与えられた 3-次元線型系の内の少なくとも 2つの 4次曲面を持つ直線の族である。線型系が生成的(generic)であれば、レーイ合同はエンリケス曲面である。これらは Reye (1882) により発見され、エンリケス曲面の最も初期の例かもしれない。
  • 4面体の縁に沿った二重線を持つ 3次元射影空間の中の 6次曲面を、次のようにとる。
次数 2 の一般的な同次多項式に対し、
[math]w^2x^2y^2 + w^2x^2z^2 + w^2y^2z^2 + x^2y^2z^2 + wxyzQ(w,x,y,z) = 0[/math]

すると、この正規化はエンリケス曲面である。これは、Enriques (1896)により発見された。

  • 不動点を持つ対合によるK3曲面の商はエンリケス曲面であり、標数が 2 よりも大きな場合の全てのエンリケス曲面は、この方法で構成することができる。例えば、S を K3曲面 w4 + x4 + y4 + z4 = 0 で、T を (w,x,y,z) を (w,ix,–y,–iz) とする位数 4 の自己同型とすると、T2 は 2つの不動点を持つ。これらの 2つの点をブローアップし、T2 による商をとると、不動点のない対合 T を持つK3曲面が得られ、これの T による商はエンリケス曲面である。別のエンリケス曲面は、元の曲面を位数 4 の自己同型 T による商をとり、商の 2つの特異点を解消することにより得ることができる。さらに別な例は、Pi(u,v,w)+Qi(x,y,z) = 0 の形の 3つの 4次曲面の交叉をとり、対合 (u:v:w:x:y:z) から (–x:–y:–z:u:v:w) による商を取る。生成的(generic)な 4次曲面に対し、この対合はK3曲面の不動点を持たない対合となるので、商はエンリケス曲面である。

参照項目

参考文献

外部リンク