エノキ
エノキ(榎、Celtis sinensis)は、ニレ科(APG植物分類体系ではアサ科)エノキ属の落葉高木。
形態・生態
雌雄同株で、高さは20m以上、幹の直径は1m以上になる。枝が多く、枝ぶりは曲がりくねっている。根元で数本に別れていることもある。樹皮は灰黒褐色。
葉は互生し、長さ4-9cmの卵形又は長楕円形で、先は尾状にのびている。葉の質は厚く、縁は鋸歯状だが、先端まで葉脈が発達しておらず、丸みを帯びている。
花には雄花と雌花がある。葉と同時期(4月頃)に、葉の根元に小さな花を咲かせる。花の後ろに、直径5-6mmの球形の果実をつける。熟すと橙褐色になり、食べられる。味は甘い。
- Celtis sinensis1.jpg
- Celtis sinensis var. japonica.jpg
- Celtis sinensis3.jpg
オオムラサキ、ゴマダラチョウ、テングチョウ、ヒオドシチョウ、エノキハムシ、タマムシ、ホシアシブトハバチ、エノキトガリタマバエ、エノキワタアブラムシなど多くの昆虫の餌、食樹である。
分布・生育地
人間との関わり
エノキの古名は「エ」であり、漢字の「榎」は夏に日陰を作る樹を意味する和製漢字である[1]。
日本語「エノキ」の名の由来について、鍬などの農機具の柄に使われたからという説があるが、奈良時代~平安時代初期には、「エノキ」の「エ」はア行のエ(/e/)、「柄(え)」やそれと同源の語とされる「枝(え)」の「エ」はヤ行のエ(/ye/)で表記されており、両者はもともと発音が異なっていたことが明らかなので、同源説は成り立たない。
建築用材、家具材、道具材、薪炭などに使われる。木材の質はやや堅いが、強度はそれほど強くない。また、狂いが生じやすい。辺材と心材の境が明瞭でない。風合いが似ていることから、ケヤキの代用とされる。
江戸時代には街道の一里塚として植えられた。野生の木も各地にたくさん見られ、地名や苗字(榎本など)となっている例も多い。
東京競馬場の第3コーナー内側に、俗に「大欅」と呼ばれる大木がある。数々の逸話があり、「欅ステークス」という名の特別競走まで開催されているが、実際は榎(エノキ)であって欅(ケヤキ)ではない。
エノキ属
エノキ属(エノキぞく、学名: Celtis)は、ニレ科(APG植物分類体系ではアサ科)の属の一つ。エノキ属は熱帯から温帯にかけて100種ほどが知られている。
- コバノチョウセンエノキ Celtis biondii
- チュウゴクエノキ Celtis biondii var. holophylla
- クワノハエノキ Celtis boninensis
- トウエノキ Celtis bungeana
- エゾエノキ Celtis jessoensis
- ナガバエゾエノキ Celtis jessoensis f. angustifolia
- カンサイエノキCeltis jessoensis f. hashimotoi
- Celtis julianae
- チョウセンエノキ Celtis koraiensis
- コバノエノキ Celtis nervosa
- アメリカエノキ Celtis occidentalis
- コウトウエノキ Celtis philippensis
- エノキ Celtis sinensis
- シダレエノキ Celtis sinensis f. pendula
- タイワンエノキ Celtis tetrandra
脚注
- ↑ 平井 信二 『木の大百科』 朝倉書店、1996年。
参考文献
- 茂木透写真 『樹に咲く花 離弁花1』 高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、300-303。ISBN 4-635-07003-4。
関連項目
外部リンク
- “Celtis sinensis”. National Center for Biotechnology Information (NCBI). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。 (英語)
- Celtis sinensis - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “エノキ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. . 2012閲覧.
- 福原達人. “ニレ科”. 植物形態学. 福岡教育大学教育学部. . 2012閲覧.