ウイグル語

提供: miniwiki
移動先:案内検索


ウイグル語(ウイグルご、ウイグル語: ئۇيغۇرچە、: Uyghur language)は、中央アジアで使用されるテュルク諸語のひとつ。

歴史

中央アジア9世紀から16世紀頃にウイグル文字で表記されていた言語である古ウイグル語と、中央アジア東部のタリム盆地(現在の中華人民共和国新疆ウイグル自治区南部)周辺で現在話されている新ウイグル語(現代ウイグル語)の、事実上2つの言語の総称である。古ウイグル語と新ウイグル語はともにテュルク諸語のひとつであるが、言語学者の分類するところによれば、若干系統を異にしているとみられ、使用される地域の分布も若干異なる。新ウイグル語の話者は、20世紀に至ってウイグル人と呼ばれるようになった民族であり、ふたつのウイグル語の間には断絶があると考えられる。[1][2][3]

新ウイグル語

新ウイグル語は、テュルク諸語の南東語群(チャガタイ語群)に属す言語で、現代ウズベク語と非常に近しい関係にある。中国領内の話者人口は1100万人以上で、さらに旧ソ連カザフスタンキルギスタンウズベキスタンにそれぞれ数万から数十万居住するウイグル人や、中国からアフガニスタンパキスタントルコなどに移住した数十万人のウイグル人によっても話される。

語彙は、アラビア語ペルシア語ロシア語などからの借用語が多く、古ウイグル語と著しく異なる。新疆では中国語からの借用語も含まれる。ヨーロッパではトルコ語からの借用語も含まれる。

ウイグル語にも母音調和の特徴があるが、ほかのテュルク諸語に比べ、かなり不規則な面を持っている。

方言

  • Yengi Hissar (uig-yen)
  • Dolan (uig-dol)
  • Qarashahr (uig-qar)
  • Lopnor (uig-lon)
  • ホータン方言(Hotan) (uig-hot)
  • Kumul (uig-kum)
  • Urumqi (uig-uru)
  • Akto Türkmen (uig-akt)
  • 中央ウイグル方言(Central Uyghur) (uig-cen)
  • ロプ方言(Lop) (uig-lop)

文字

文字は、歴史的にはアラビア文字ペルシア文字)が使われていたが、20世紀になると旧ソ連ではキリル文字が使われた。中華人民共和国では、ラテン文字が公式に採用されたものの、1982年に改良アラビア文字としてアラビア文字(ペルシア文字)の使用が復活している。

改良アラビア文字

現代のウイグル語では改良アラビア文字(中国語 老維文)を用いる。これは、母音を書き分ける符号の追加や、ペルシア文字で同音となる子音の除去を行ったもので、全て1音素1文字に対応している。また、文字の体系としても、他のアラビア文字におけるようなアブジャドではなく、ラテン文字と同様のアルファベットとなっている。

なお、この改良アラビア文字をウイグル文字と呼ぶことがあるが、古ウイグル語で使われていたウイグル文字との直接の関係は無い。

20世紀初頭以前のウイグル語では、アラビア文字(ペルシア文字)はアラビア語やペルシア語での綴りにより近い形で用いられていた。

改良アラビア文字の文字コードセットは、中国の国家標準規格[4]に規定されている。

ラテン文字

主要なラテン文字表記は3通りある。

  • ウイグル・ラテン文字(ウイグル語 Uyghur Latin Yëziqi, ئۇيغۇر لاتىن يېزىقى‎ ; 中国語 拉丁维文; 略称 ULY) - 2001年に制定された後、2008年に改定されている。
  • ウイグル新文字(ウイグル語 Uyghur Yëngi Yëziqi ; 中国語 新维文; 略称 UYY) - 1965年から1982年まで、旧来のアラビア文字及びキリル文字(ソ連で用いられていた文字セットで、1956年から新疆でも試用されていた。)に替わって、中国で公式に用いられた表記法である。漢語拼音方案のほか、ローマ字(ラテン文字)表記のテンプレート:Link-en及びソ連で用いられていたキリル文字によるウイグル語文字セットの影響が見て取れる。
  • ウイグル・コンピュータ文字(ウイグル語 Uyghur Kompyuter Yeziqi, ئۇيغۇر كومپيۇتېر يېزىقى) - 西欧と同じローマ字のアルファベットを使用する文字セット。非公式ながら広く使用されている。ウイグル・ラテン文字を制定する際に、参考とされた。
アラビア文字 ULY (カッコ内は2001版) UYY キリル文字 IPA   アラビア文字 ULY (カッコ内は2001版) UYY キリル文字 IPA
ئا A a A a А а /a/   ق Q q Ⱪ ⱪ Қ қ /q/
ئە E e Ə ə Ә ә /æ/ ك K k K k К к /k/
ب B b B b Б б /b/ ڭ NG ng NG ng Ң ң /ŋ/
پ P p P p П п /p/ گ G g G g Г г /ɡ/
ت T t T t Т т /t/ ل L l L l Л л /l/
ج J j J j Ж ж /ʤ/ م M m M m М м /m/
چ CH ch Q q Ч ч /ʧ/ ن N n N n Н н /n/
خ X x H h Х х /x/ ھ H h Ⱨ ⱨ Һ һ /h/
د D d D d Д д /d/ ئو O o O o О о /o/
ر R r R r Р р /r/ ئۇ U u U u У у /u/
ز Z z Z z З з /z/ ئۆ Ö ö Ɵ ɵ Ө ө /ø/
ژ ZH zh (ZH J 又は J j) Ⱬ ⱬ Җ җ /ʒ/ ئۈ Ü ü Ü ü Ү ү /y/
س S s S s С с /s/ ۋ V v V v В в /v/
ش SH sh X x Ш ш /ʃ/ ئې Ë ë (É é) E e Е е/Э э /e/
غ GH gh Ƣ ƣ Ғ ғ /ʁ/ ئى I i I i И и/Ы ы /i/ or /ɨ/
ف F f F f ф Ф /f/ ي Y y Y y Й й /j/
  • アラビア文字表記の場合、母音を表す文字が語頭もしくはほかの母音の直後にあれば前にハムザ (ئـ) がつき、子音の直後にあればつかない。
  • キリル文字表記の場合は、ラテン文字表記の yu および ya に相当する ю および я も使われる。

文法


コンピュータ

キーボード

Windowsのウイグル語キーボードの配列は以下の通り。

脚注

  1. Coene 2009, p. 75.
  2. Roos, Martina Erica. 2000. The Western Yugur (Yellow Yugur) Language: Grammar, Texts, Vocabulary. Diss. University of Leiden. Leiden, page 5.
  3. Arik 2008, p. 145
  4. GB12050-1989 信息处理 信息交换用维吾尔文编码图形字符集

関連項目

外部リンク

テンプレート:テュルク諸語