イオラーオス
イオラーオス(古希: Ἰόλαος, Iolāos、英語: Iolaus)
ギリシア神話の人物である。長母音を省略してイオラオスとも表記される。
ヘーラクレースの異父兄弟イーピクレースとアウトメドゥーサの子[1]。クレオーンの娘メガラーとの間にレイペピレーをもうけた[2]。レイペピレーはヘーラクレイダイのピューラースと結婚し、ヒッポテースとテーローの母となった[3][4]。
イオラーオスはエウリュステウスに仕えた父イーピクレースとは異なり[5]、ヘーラクレースの戦車の御者として冒険に同行し、ヘーラクレースの多くの冒険を助けた。
Contents
神話
ヒュドラーの退治
ヘーラクレースがレルネーのヒュドラーを退治したとき、イオラーオスはヘーラクレースの戦車の御者となってレルネーに同行した。またヘーラクレースがヒュドラーの再生する首に苦戦するのを見て、イオラーオスは森を燃やし、その燃え木でヒュドラーの首を焼いて再生するのを防いで助けた。しかしこのためエウリュステウスはヒュドラー退治を難行から除外した[6]。しかしイオラーオスはその後もヘーラクレースの冒険に同行し、ヘーラクレースは12の難行を達成した後、イオラーオスにメガラーを妻として与えた[7]。またイオラーオスはカリュドーンの猪狩りや[8][9]、アルゴナウタイに参加し[10]、オリュンピア競技祭や[11]ペリアースの葬礼競技では戦車競走で勝利した[12]。
エウリュステウスとの戦い
ヘーラクレースの死後、年老いたイオラーオスはヘーラクレイダイと行動をともにし、エウリュステウスの迫害を避けて放浪した後にマラトーンにたどり着き、テーセウスの子デーモポーンに受け入れられた。デーモポーンは彼らの為にエウリュステウスの軍勢と戦おうとしたが、そこにヒュロスが援軍を率いて現れたとき、イオラーオスは自らも戦争に加わった。そして戦場でエウリュステウスの戦車を発見すると、ヘーベーとゼウスに1日だけ若返ることを願った。この願いは聞き届けられ、天から2つの星が現れるとイオラーオスの戦車を黒い雲が包み込み、中から若返ったイオラーオスが現れた。イオラーオスは勇戦してスケイローンの岩付近でエウリュステウスを捕らえ[13]、殺した[14]。しかしエウリュステウスを討ったのはヒュロスともいわれる[15]。
その後
後にイオラーオスはアッティカ人とボイオーティアのテスピアイ人を率いてサルディニア島に移住し[16][17]、イオラーオスはオルビア市を、アッティカ人はオグリュレー市を創建した[18]。テーバイの伝承ではイオラーオスはサルディニア島で死に[17]、島のイオライアではイオラーオスが祀られていたという[18]。
系図
アムピトリュオーン | アルクメーネー | ゼウス | ピューラース | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
クレオーン | イーピクレース | アウトメドゥーサ | ヘーラクレース | メーダ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
メガラー | イオラーオス | アンティオコス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
レイペピレー | ピューラース | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヒッポテース | テーロー | アポローン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アレーテース | カイローン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
脚注
- ↑ アポロドーロス、2巻4・11。
- ↑ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.48a。
- ↑ パウサニアス、9巻40・6。
- ↑ ヘーシオドス断片190。(パウサニアス、9巻40・6 による『大エーホイアイ』の引用)。
- ↑ ヘーシオドス『ヘーラクレースの楯』90行-91行。
- ↑ アポロドーロス、2巻5・2。
- ↑ アポロドーロス、2巻6・1。
- ↑ オウィディウス『変身物語』8巻。
- ↑ ヒュギーヌス、173話。
- ↑ ヒュギーヌス、14話。
- ↑ パウサニアス、5巻8・3-8・4。
- ↑ ヒュギーヌス、273話。
- ↑ エウリーピデース『ヘーラクレースの子供たち』。
- ↑ パウサニアス、1巻44・10。
- ↑ アポロドーロス、2巻8・1。
- ↑ パウサニアス、7巻2・2。
- ↑ 17.0 17.1 パウサニアス、9巻23・1。
- ↑ 18.0 18.1 パウサニアス、10巻17・5。
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- 『ギリシア悲劇III ―エウリピデス(上)』、ちくま文庫(1986年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
- 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年)