アナログ
アナログ(英: analog、英語発音: [ˈænəˌlɔːg] アナローグ)は、連続した量(例えば時間)を他の連続した量(例えば角度)で表示すること。デジタルが連続量をとびとびな値(離散的な数値)として表現(標本化・量子化)することと対比される。時計や温度計などがその例である。エレクトロニクスの場合、情報を電圧・電流などの物理量で表すのがアナログ、数字で表すのがデジタルである。元の英語 analogy は、類似・相似を意味し、その元のギリシア語 αναλογία は「比例」を意味する。
長所・短所
情報(信号)をアナログ的に処理することの長所として以下のようなものがある。
- 瞬間的、直感的な情報処理が可能。スピードメーターの視認やオペアンプによる演算がデジタルと比べると高速である(特に割り算)。
- デジタルにある量子化誤差が存在しない。
- 連続時間処理であるため、クロックジェネレータ等は不要。
対して短所は次の点である。
- 内部の熱雑音等の物理的な影響を受ける。
- 外部からの擾乱(雑音など)の影響を受けやすい。
- 保存・複製・転送による劣化が生じる。
- 一旦誤差が生じると復元できない。対するデジタルは、エラー訂正等で(程度にもよるが)修復が可能である。
- 時間軸が基本的に連続処理(アナログ)であり、時間軸補正は困難である。
比喩的用例
二値的なものをデジタルとし、これに対して多値的なものをアナログとみなす用例がある。
- 比喩的に、物事を割り切らず、曖昧さを残しつつ理解する人のことを「アナログ人間」と呼ぶことがある(この呼称は後述の誤用の意味で用いられることもある)。
- 情報機器の入出力では、多段階で入力できるものをアナログと呼ぶ(実質的には内部ではデジタルで処理されている。)。
- ゲーム機のコントローラからの入力(レバーを倒した角度など)を多値で処理できる場合は「アナログ入力に対応」しているとされる。
- プログラマブルロジックコントローラ(PLC)での多段階で入出力できる端子をアナログ入出力と呼ぶ。(二値入力の場合はデジタル入出力)
俗用・誤用
俗に、「新しい物=デジタル」というイメージとの対比として「古い物=アナログ」という表現がされることがあるが、連続量ではない離散的(デジタル)なものを指していることも多くその場合は誤用である(たとえばそろばんをアナログとするなどが典型)。
なお、単に「伝統的な」、「古い」を表す用語としては「レガシー」がある。ただし、レガシーにはいずれ消えるべきものというニュアンスもある。
デジタルという語に対して漠然と付与された「コンピュータ」「ハイテク」「科学的理論」「理性」「理系」といったステレオタイプから、アナログがその対義語として「ローテク」「経験則」「勘」「情緒」「文系」等のステレオタイプをあらわして。麻雀の戦術論では完全にロジカルに説明できる物をデジタル (麻雀) と呼び、経験則などを反映した物をアナログ (麻雀) と呼ばれている。しかし、これらのステレオタイプは誤った二分法でありまた、特に前述のように本来の語義からは外れた誤用を招きやすい解釈である。
- イラストレーションにおいて、コンピューターグラフィックスの技術を用いたものを「デジタル作画」と呼ぶのに対し、筆やクレパスなどの旧来の画材を用いて表現することを「アナログ作画」と呼ぶこともある。
- 電気自動車の急速充電規格であるCHAdeMOでは、シリアル通信による制御をともなうController_Area_Network (CAN) によるものをデジタルと呼び、電圧の二値入力の事をアナログと呼んでいる。[1]
- コンピュータゲームをデジタルのゲームと見なし、コンピュータなどの電子機器を使わずに遊ぶウォー・シミュレーションゲームやテーブルトークRPG、トレーディングカードゲームなどを「アナログゲーム」として定着しているが、将棋などの多くのボードゲームのように、連続量的な要素が全く無く、離散的なゲームを「アナログ」と呼ぶのは誤用である。
- 時計については、時針、分針およびオプションで秒針を用いたものを「アナログ時計」、デジタル式(数字式)の表示装置を用いたものを「デジタル時計」と呼ぶ。これらは表示方式を観念した分類である。ただし、内部処理については昔のアナログ時計であっても、例えば振り子時計は振り子運動の1周期を1秒に変換する時点でデジタル処理となる。詳細は時計を参照。