りょうもう
りょうもう とは、東武鉄道が主に浅草駅 - 赤城駅間を東武スカイツリーライン・伊勢崎線・桐生線経由で運行する特別急行列車の愛称。日光線特急「スペーシア」に対して伊勢崎線特急「りょうもう」と呼称されることが多い。
また本項では過去に伊勢崎線で運行されていた列車、500系電車を使用して運行されている「リバティりょうもう」についても記載する。
運行概況
「りょうもう」の運転本数は2017年現在、赤城発着は上り15本・下り16本、館林発着・伊勢崎発着・葛生発着は1往復ずつ、太田発着は上り8本・下り7本となっている。主な利用者は工業地域でもある両毛地区へのビジネス客が多いが、あしかがフラワーパークなどの観光客向けに臨時列車が運行される場合もある[1]。
「リバティりょうもう」は2017年4月21日のダイヤ改正より運行が開始された特急列車であり、館林行の下り1本のみ運行される。浅草 - 東武動物公園間は「リバティけごん」と併結され、東武動物公園駅で分割される。「りょうもう」と通し番号になっている。
比較的表定速度が低いため、群馬県の諮問機関「群馬県鉄道網活性化研究会」が2009年に出した「群馬県の鉄道網活性化に向けた提言」の中では「特急りょうもう号の増便とスピードアップによる利便性向上」を取り組むべき課題として挙げられている[2]。
編成
りょうもう | ||||||||||||||||||||||||
← 伊勢崎・赤城・葛生 浅草 →
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停車駅
- 東武伊勢崎線内 浅草駅 - とうきょうスカイツリー駅 - 北千住駅- 春日部駅■ - 東武動物公園駅 - 久喜駅 - 加須駅▲ - 羽生駅▲ - 茂林寺前駅★ - 館林駅 - 足利市駅 - 太田駅 - 木崎駅 - 境町駅 - 新伊勢崎駅 - 伊勢崎駅
- 東武桐生線内 藪塚駅 - 新桐生駅 - 相老駅 - 赤城駅
- 東武佐野線内 佐野市駅 - 佐野駅 - 田沼駅 - 葛生駅
- ■:春日部駅は「リバティりょうもう」43号のみ停車、▲:一部列車通過(概ね下り浅草発15時前と上り赤城発8 - 15時台の始発列車が通過)、★:シーズン中のみ一部列車が臨時停車
- 使用車両
- 「りょうもう」 - 200系・250系が使用される。
- 「リバティりょうもう」- 500系が使用される。浅草 - 東武動物公園間は「リバティけごん」と併結のため6両編成で、東武動物公園 - 館林間は3両編成で運行される。
- 全車座席指定席制を採用しており、「スペーシア」と違い通年一律料金である。なお浅草駅を12:00 - 16:59に発車する列車と、赤城駅を17時以降に発車する列車については特急料金の割引(「午後割」「夜割」)が適用される。リバティは通年スペーシアの土休日料金が適用される。
- 不定期運行のスカイツリートレインの太田発着便の停車駅はりょうもうに準じていた。
特急料金(小児半額、端数は10円単位で切り上げ)。2014年4月1日改定。
キロ程 | 通常料金 | 午後割・夜割 | リバティ | 備考 |
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1 - 40 | 510 | 310 | 510 | 浅草 - 久喜間も適用 |
41 - 60 | 770 | 510 | 930 | |
61以上 | 1,030 | 820 | 1,230 |
歴史
東武本線系統の優等列車は戦前から存在し、東武日光線の開業直後から日光・鬼怒川方面への特急には展望車やデハ10系など優等車両が投入され、観光輸送目的の比重が大きい列車であったのに対し、1933年(昭和8年)より「無料急行」として一般車を使用して運転が開始された伊勢崎線・桐生線方面への速達列車は中島飛行機(現在の富士重工業)関連工場が多く所在した太田地区や織物産業が盛んな足利・桐生地区(両毛地区)への便を図ったものであった。
戦後、東武本線では日光・鬼怒川方面でモハ5310形・クハ350形を充当した特急列車「華厳」「鬼怒」の運転を再開、折からの日本国有鉄道(国鉄)東北本線・日光線の準急行列車「日光」との競合関係により新型車両の新製投入が繰り返された。その都度型落ち(モハ5310形・クハ350形、5700系、1700系)が発生したため、その余剰車は東武日光線・鬼怒川線の有料急行列車として運行・増発されることとなった。1953年(昭和28年)10月には伊勢崎線にも急行料金が新設され、翌11月、有料急行「りょうもう」(当時は愛称なし)は東武宇都宮線有料急行「しもつけ」(当時は愛称なし、1953年8月より運転開始)に併結される形で日光線・鬼怒川線有料急行の間合い運用(早朝上り便と夜間下り便)として浅草駅 - 新桐生駅間で運転を開始した。その後、伊勢崎線有料急行は利用が好調で運行区間を新大間々駅に延長、愛称も「りょうもう」のほか「こうずけ」、「おりひめ」、「あかぎ」、「じょうもう」(1963年3月まで上毛電気鉄道中央前橋駅まで乗り入れ)、「からさわ」(佐野線方面)など複数使用され、国鉄優勢の宇都宮方面「しもつけ」が廃止されたのとは対照的に増発された(1967年時点の運行本数は7往復:赤城便5往復、伊勢崎便1往復、葛生便1往復)。また、本線全線での特急・急行・快速列車の増発などによる車両不足から、日光線特急の型落ち車だけではなく、当時の日光線特急専用車両であった1700系が運用に就くこともあった。
1969年(昭和44年)9月には特急車両に準じた内装を備えた伊勢崎線有料急行専用車両1800系を新造し、列車愛称を「りょうもう」に統一し、全車座席指定席制とした。以後、東京 - 両毛地区間のメインルートとして定着し、増発および4両編成から6両編成への増結がなされた。
1990年代には「東武のビジネス列車」としての位置付けが強化され、定期乗車券と急行券で乗車が可能な「ビジネスライナーりょうもう」が数本設定された(東武線の特急・急行全列車で定期乗車券での乗車が可能になった1997年に廃止)。1991年(平成3年)には日光線特急の100系「スペーシア」への置き換えが完了して余剰となった1720系「デラックスロマンスカー」の車体を更新した200系が就役し、1998年(平成10年)に250系が増備され、1800系との置き換えが完了し、翌1999年(平成11年)に現行の特急へと格上げされた。
年表
- 1933年(昭和8年):無料急行列車(ロングシート車)が浅草駅 - 新桐生駅間で運転を開始。
- 1953年(昭和28年)10月:伊勢崎線にはじめて急行料金が制定される。
- 1953年(昭和28年)11月:モハ5310形・クハ350形により自由定員制有料急行として浅草駅 - 新桐生駅間で運転開始。朝上り1本、夜下り1本、浅草駅 - 杉戸駅(現・東武動物公園駅)間は宇都宮線有料急行に併結する形での運行であった。
- 1956年(昭和31年):新大間々駅(現在の赤城駅)まで運行区間を延長。また、この年より上毛電気鉄道中央前橋駅まで直通運行する急行「じょうもう」運転開始。
- 1957年(昭和32年):赤城方面急行「こうずけ」を新設。
- 1963年(昭和38年):急行「じょうもう」上毛線の乗り入れ終了。赤城方面急行「おりひめ」および葛生方面急行「からさわ」を新設。また、北千住駅に上り列車の停車を開始。
- 1966年(昭和41年):赤城方面急行「あかぎ」を新設。
- 1969年(昭和44年)9月20日:専用車両である1800系が落成。同時に急行料金は一列車乗車ごとではなく距離による地帯制を採用。列車愛称を「りょうもう」に統一。1800系時代の営業最高速度は105km/h。
- 1985年(昭和60年)4月1日:1号車が禁煙車に指定される。
- 1989年(平成元年)10月:ホーム有効長延伸とわたらせ渓谷鐵道との連絡のため、相老駅に全列車停車開始。
- 1990年(平成2年)9月25日:ダイヤ改正により、2・37号が定期券で乗車できる「ビジネスライナー」に指定される。
- 1991年(平成3年)2月1日:1800系の後継車両200系就役。この時に"Ryomo"のロゴが登場する。
- 1993年(平成5年)4月1日:禁煙車が1 - 3号車までとなる。
- 1997年(平成9年)3月25日:ダイヤ改正により以下のように変更する。
- 1998年(平成10年)
- 2月:250系就役。
- 3月31日:1800系による「りょうもう」の運転終了。最後に運行したのは1819編成だった。
- 1999年(平成11年)3月16日:ダイヤ改正により以下のように変更する。
- 2001年(平成13年)3月28日:ダイヤ改正により金曜日・土休日限定で伊勢崎発着列車を新設。当初上りは北千住行であった。
- 2002年(平成14年)11月:特急・急行料金の特割(値下げ)キャンペーンを実施。
- 2003年(平成15年)3月19日:ダイヤ改正により以下のように変更する。
- 上記のキャンペーンの効果を考慮し、特急・急行料金の値下げが全区間で行われ「午後割」「夜割」の制度も導入した。しかし、料金制度上「急行料金で特急に乗車することが可能になる」というアンバランスな状況となった。
- 車掌用携帯端末機の導入に伴い、車内での検札が省略になる。
- 浅草駅の特急・急行ホームにインフォメーションカウンターを設置。
- 東武動物公園駅に全列車停車開始。春日部駅のスペーシア等と同様に駅員による特急券確認のため乗降口を2・5号車に限定する。それに伴い、客室の正面と貫通扉の上部、さらに車内の客用扉にはそれを案内するステッカーが貼られる。ホーム上に特急券自動券売機が設置される。
- 伊勢崎発が浅草行に変更され毎日運転となる。
- 2005年(平成17年)3月1日:禁煙車が1 - 5号車までとなる。
- 2006年(平成18年)3月18日:ダイヤ改正により以下のように変更する。
- 久喜駅に下り13本・上り11本が停車開始。東武動物公園駅と同様の措置がとられる。ホーム上に特急券自動券売機が設置される。
- 昼間時の浅草駅・赤城駅発車時刻が変更される。
- 伊勢崎行が毎日運転となる。
- 2007年(平成19年)
- 2008年(平成20年)11月11日:「特急券チケットレスサービス」開始により、販売窓口を経由せずに購入・乗車が可能になる[4]。
- 2009年(平成21年)
- 4月29日:ゴールデンウィークに限り、臨時特急として北千住行が約6年ぶりに運行される。また、館林発着列車も特急に昇格した1999年以降初めて運行される。
- 6月6日:ダイヤ改正により以下のように変更する。
- 久喜駅に停車する列車本数が下り13本→14本・上り11本→14本に増加。
- 夕夜間の浅草駅発車時刻が昼間と同じ時刻に変更される。
- 臨時運行されていた館林発着が毎日運転となり約10年ぶりに再設定される。
- 2012年(平成24年)
- 2013年(平成25年)3月16日:ダイヤ改正により以下のように変更する。
- とうきょうスカイツリー駅に下り22本が停車開始(乗降口を2・5号車に限定)[5]。
- 昼間時の浅草駅発車時刻が変更される。
- 葛生行・伊勢崎行の時刻がそれぞれ1時間繰り下げられる。
- 2014年(平成26年)4月1日:とうきょうスカイツリー駅→浅草間の乗車に限り特急料金不要で乗車できる措置が全列車に拡大。
- 2016年(平成28年)6月17日:208編成を、友好鉄道協定締結している台湾鉄路管理局TEMU2000形電車(普悠瑪号)に合わせた塗装にし、共通デザインの記念エンブレムを掲出して運行を開始。
- 2017年(平成29年)4月21日:500系電車「リバティ」の運行開始に伴い、ダイヤ改正を実施[6][7]。
- 浅草発赤城行き最終特急列車が1時間繰り下げられる。
- 浅草発伊勢崎行が1時間繰り上がり、葛生行が1時間繰り下がる。
- 土休日のみ運転の1・6号が毎日運転に変更。通年同一運行本数になる。
- 浅草発赤城行き始発特急列車が10分繰り上げられる。
- 「リバティけごん」と併結する「リバティりょうもう」を1本設定。春日部駅に停車し、東武動物公園駅で分割を行う。
- とうきょうスカイツリー駅と久喜駅に全列車停車開始。また、とうきょうスカイツリー駅では下り列車の乗降口限定が廃止され全車両からの乗降が可能になる。
- 2018年(平成30年)5月20日:東武1800系電車の運転を廃止・引退。
列車名の由来
列車名として、「りょうもう」の他に「あかぎ」「おりひめ」「こうづけ」「じょうもう」なども使用されていたが、専用車両である1800系の就役後は「りょうもう」に統一されている。各列車名の由来は下記のとおりである(五十音順)。
- 「あかぎ」:終着駅である赤城駅が赤城山観光の拠点としていたことから。なお、国鉄・東日本旅客鉄道(JR東日本)にも同名の「あかぎ」が存在する。
- 「おりひめ」:桐生市および一帯が絹織物の産地であることにちなむ(桐生市と足利市には「織姫神社」がある)。
- 「こうづけ」(こうずけ):群馬県の旧称「上野国」("こうづけ"のくに)から。
- 「じょうもう」:群馬県の異称「上毛」(上野国の古称、「上毛野国」の略)から。
- 「りょうもう」:主たる目的地である群馬県東部(桐生+太田+館林=東毛)および栃木県南西部(足利・佐野)を指す「両毛」から。
脚注
- ↑ GW限定伊勢崎線臨時特急列車を運転します! (PDF) - 東武鉄道ホームページ
- ↑ (鉄道網活性化に向けた提言について) 群馬県
- ↑ これまでは日光線系統の列車のみ予約可能であった。なお、予約回答日から7日以内(予約回答日から乗車前日までが7日に満たない場合は乗車日の前日まで)に東武トラベル各支店または東武線取り扱い各駅にて購入する必要がある(特急券の予約|特急列車のご案内|東武鉄道)。
- ↑ 特急券チケットレスサービス・東武携帯ネット会員
- ↑ 3月16日(土)東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線 ダイヤ改正
- ↑ “2017年4月21日(金)ダイヤ改正を実施! 東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線・東武アーバンパークライン 【特急列車概要】 (PDF)”. 東武鉄道 (2017年1月18日). . 2017閲覧.
- ↑ “新型特急車両「リバティ」も登場!平成29年4月21日ダイヤ改正を実施”. 東武鉄道. . 2017閲覧.