はさみ

提供: miniwiki
移動先:案内検索

はさみ

  • (鋏)物を刃で挟み込むことによって、物を切断するための道具。本項目で主に解説する。
  • (挟み、挿み)物をはさみ込むことによって、物を握持するための道具。洗濯用の洗濯ばさみ、炭火用あるいは清掃用の火ばさみ、角氷用の氷ばさみなど。なお、物をつかむ道具である「やっとこ」にも「鋏」の字があてられる。
  • (螯、鉗)節足動物の肢の先にある道具の鋏のような構造の部分 - はさみ (動物)

ファイル:2008 käärid.png
いろいろなはさみ

はさみ剪刀)は、物を二つのではさんで切断する道具である。

概説

はさみとは、二つの刃で物を挟んで、切る道具である。 形態としては、「かしめ」が支点になっており、支点が刃(作用点)と「握り」の中間にあるいわゆる「洋鋏」と、中間部がばねになっており、支点が刃から離れている握り鋏(和鋏)がある。

助数詞には「」あるいは「挺」(読みはいずれも「ちょう」)が用いられる。

歴史

ファイル:Scissors turkey.jpg
2世紀ごろのはさみ。トルコ北東部トラブゾン出土とされる。

古代エジプトの壁画にはさみやピンなどが描かれており、また紀元前1000年頃の古代ギリシアのものとされるはさみが出土しており、古代から使われていたと考えられている。元々は医療用もしくは羊毛の収穫に使われており、当初は握り鋏が用いられていた。

かしめ部がある形式(日本で「洋ばさみ」と呼ばれている形式)が登場したのは、西洋では古代ローマ以降、東洋では以降だと言われている。

日本

日本では6世紀に中国を通して伝わったと考えられており、この時代の古墳からの出土例もある。古代・中世には主に握り鋏が用いられ、また金属製のものの他に木製のはさみも作られていた。ただ裁断などの用途には小刀が用いられていたため、はさみの普及は職人や華道など限定的なものであった。

量産されるようになったのは江戸時代から、一般庶民に普及したのは江戸時代末期から明治時代ころといわれる。明治時代から普及した背景には、衣服の洋装化により従来以上に複雑な布の裁断が必要となったことが一因となっている。

握り鋏

ファイル:Small Scissors.jpg
握り鋏(和鋏)

要(かしめ)部を持たない原始的な構造の鋏である。握り鋏は、通常1枚の細長い金属板の両端に刃が付けられ、これをU字形に曲げて中間部がばね状にしてある。英語では spring scissors日本では「和鋏」とも呼ばれるが、日本で発明されたものではない。ただし、現在も広く生産・使用されているのは日本のみである。だが日本でも現代は洋鋏が主流であり、和鋏が使用されるのは糸切り鋏や飴細工用などの限定された用途である。

握り鋏は、力を加えないと刃は開いている。手で両側から力を加えることで刃の部分が重なり合う構造となっており、2枚の刃が交わった部分が閉じていくことで間に挟んである紙や布などが切断されるしくみである。力学的には、てこのうち第3種てこの構造をもち、二枚の刃の部分が「作用点」、金属板がU字型に曲げられた部分が「支点」、刃に近い持ち手の部分が「力点」となっている。

握り鋏は使用していない時にはばねの力で刃は開いているが、安全のため先端の刃の部分を閉じた状態で覆うキャップやカバー付きのものも存在する。

洋鋏

ファイル:Hasami1.jpg
ラシャ鋏(洋裁鋏)
ファイル:Hasami2.jpg
スキ鋏(櫛状の刃)
ファイル:2scissors.jpg
事務用洋鋏。左-左手用 右-右手用
ファイル:Sissor001.jpg
理美容鋏各部名称

構造

洋鋏は通常2枚の細長い金属板が支点を中心軸として重なり合う構造となっており、それぞれの金属板の内側に向かってが付けられ、2枚の刃が交わった部分が閉じていくことで間に挟んである紙や布などが切断されるしくみである。構造的にはてこのうち第1種てこの構造をもち、二枚の刃の部分が作用点、刃をつなげる部分が支点、反対側の持ち手の部分が力点となる。洋鋏は使用していない時には安全のため閉じておかれることが多く、先端の刃の部分を覆うキャップやカバー付きのものも存在する。

刃の接触点に剪断する力を集中するように、刃はわずかにひねられている。これを「ひねり」と呼ぶ。また、切る対象に依って、刃と刃のあたる角度を変えるために裏側に「スキ」と呼ばれる隙間をつくっている。これによって例えば、髪の毛のような軽い材質でかつ、硬い表面のものでも切ることができる。正確に切らなければならないものほど、精密に調整したスキとひねりが必要である。

なお、英語では scissors[1]というが、金切り鋏やケーブル鋏など、刃が柄に対して小さく、強力なものは snips と呼び分けている。

材質

はさみは切断工具であるため、固いを使ったものが多い。一般の事務用、学校での工作用のものではに強いステンレス鋼を使ったものが主流である。最近では、表面にフッ素コート加工を施してテープによるベタつきを防ぐ工夫をした商品も一般化している。

子供用にはプラスチック製のはさみもある。

特殊な用途向けに、切断されるものに対して磁気の影響を及ぼすことがないように、セラミックで作られたはさみもある。

さらに、理美容師などが使用するはさみの高級品には、コバルト合金製のものがある。

右利き用と左利き用

通常のはさみは右利き用に作られているが、左利き用のものも少数であるが市販されている。利き手と異なる向きにつくられたはさみを使用するのは困難が伴う。これは、はさみのかみ合わせ部分に対する力の配分が逆になってしまうため、かみ合わせ部分を広げる方向に力が入ってしまうからである。

左利き用のはさみは、右利き用のはさみと完全に左右が反転した、総左と呼ばれるものと、持ち手の部分のみ左右が反転した足左と呼ばれるもの(かみ合わせ部分は右利き用と同じ)がある。足左は、右利き用のはさみに慣れた人、すなわち、かみ合わせの力配分を右利き用にしている人が、持ち手の部分だけ左用にしたい場合に使われる。逆に、足左に慣れている人は、総左のはさみをうまく使いこなせない。これは、足左のはさみの力の配分方法と、総左のはさみの力の配分方法が反対になるからである。

足左のはさみは、本来の左利きのはさみとは違い、一種便宜的なはさみであるため、市場に出回る量は少ない。

なお、右利き用のはさみではあるが、右手、左手どちらでも持てるような、ユニバーサルデザインにしたはさみもある。足左のはさみと同じように使うことができる。

用途

次のようなものが市販されている。

  • 事務
  • 工作・加工用
    • 紙細工用(紙切り用)
    • ピンキング鋏(山形・波形に切るために用いられる)
    • 金切り鋏
    • 板金鋏
    • ゴムホース用鋏
    • ケーブル鋏
    • カーペット切鋏
  • 料理用
    • キッチン鋏
    • 昆布切鋏
  • 理美容用
  • 手芸用
  • 園芸用
    • 生花用
    • 植木鋏
    • 刈込鋏
    • 葉刈鋏
    • 盆栽
    • 摘果鋏
    • 採果鋏
    • 芽切鋏
    • 摘花鋏
    • 野菜鋏
    • 収穫鋏
    • 高枝切鋏
    • 太枝切鋏
    • 芝刈鋏

唐鋏と博多鋏

福岡市には「博多鋏」がある。伝統工芸品であるが和鋏ではなく、かしめ付きで洋鋏に近い。鎌倉時代南宋商人の謝国明が中国の鋏を日本へ伝え、「唐鋏」と呼ばれたことに始まる。幕末に、刀鍛冶だった安河内卯助が唐鋏を作るようになり、明治維新後の廃刀令で鋏づくりに転業する刀鍛冶が相次いだ。卯助の弟子である高柳亀吉が明治20年に「博多鋏」と称するようになった[2]。2017年にその製作技術が国の無形民俗文化財に選ばれたが、現役の職人は1人で、後継者がいない状況である[3]

法律による規制

日本においては、所持には法律による規制がある。正当な理由[4]を持たずに隠して携帯[5]することは軽犯罪法に抵触するため、科料勾留されることがある。

また、刃体の長さが8センチメートルを超える[6]はさみを、業務[7]その他正当の理由を持たず携帯することは銃刀法第22条に抵触するため、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金を課せられることがある。

脚注

  1. 刃が2枚あるため1丁でも複数形となる。発音は sízɚz(‐zəz)「シザーズ」で、日本でよく聞かれる、シーサースやシーサスは不正確。
  2. 博多鋏はかた伝統工芸館ホームページ
  3. 高柳晴一「博多鋏 鍛冶に熱き魂◇火入れ・冷まし・磨き…、伝統守る唯一の職人◇」『日本経済新聞』朝刊2017年10月23日(文化面)
  4. 社会通念上正当な理由が存在する場合であり、例えば、店からはさみを購入して自宅に持ち帰るような場合等。
  5. 自宅または居室以外の場所で、手に持ったり、身体に帯びるなど直ちに使用できる状態で、人目につかないよう隠して身辺に置くこと。
  6. ネジのあるはさみはネジから切っ先までの長さ。握り鋏は全体の長さから8センチメートルを引いた長さ。
  7. 社会生活上の地位に基づき、反復継続してはさみを使用することがその人にとって仕事であり、はさみを使うことが業務にあたる場合。

参考文献

  • 木内勝作・絵・田中皓也絵 「はさみ」『工作図鑑 : 作って遊ぼう!伝承創作おもちゃ』 福音館書店、1988年、62-140。ISBN 4-8340-0724-3。

関連項目

外部リンク